劣化した内装を交換するついでにリメイクして娘さんが使う案件。

ルイヴィトンリメイク
リメイク前
目次

ベタベタと劣化する内装

なぜか劣化するのが分かっているのに合皮を内装に使いたがるルイヴィトン。合皮は使っても使わなくても必ず劣化する素材です。特に使わずに押入れに入れっぱなしだと湿気で余計に劣化が進行しがちです。

ルイヴィトン内装の劣化

合皮は不織布などの土台に色がついた塗膜が載っている構造です。劣化してくるとその塗膜が剥離してきます。合皮の種類によっては剥離せずに塗膜が粉状に分解し鞄の中を汚してしまいます。

ルイヴィトン合皮の劣化

ルイヴィトンの劣化した合皮はベタベタするタイプです。そのベタベタが革や金具を汚してしまいます。革についた塗膜は比較的綺麗に取り除ける場合があります。

金具についてはベトベトはある程度取り除けますが、付着した塗膜に吸収された湿気が影響してか金具錆びてしまいがちです。ファスナーのエレメントも常に合皮に接していたようで緑青(サビ)が発生しています。

ルイヴィトン合皮の劣化

カシメ金具にもサビが。緑青は銅が酸化すると発生するサビなのでカシメの真鍮も銅を含んでいるので錆びてしまっています。シリアルの刻印されたこのタグも綺麗にして移設します。

ルイヴィトン内装交換
シリアル番号はぼかしています

ルイヴィトンのロゴマークの入ったスライダーは流用しようと思ったのですが、エレメントと接するレールの中は塗膜がこびりつきメッキが剥げてサビも発生していたのでファスナー同様にスライダーも交換となります。

ルイヴィトン内装交換

付属のチェーンも塗膜まみれ。ベトベトが間に入り込んでいるのでこれも不要ということに。

ルイヴィトン内装交換

レザー部分は救出しました。こびりついていた塗膜を除去し古い糸もすべて抜き取り新しい内装に移設します。

ルイヴィトン内装交換

劣化した内装。ルイヴィトンも劣化するのが分かっていながら合皮を使うということが、罪深いというかブラック体質というか。

ルイヴィトン内装交換

ヌメ革も乾燥して痛んでいます

ルイヴィトン内装交換

パイピングの革も乾燥し所々ひび割れが発生し表面もガサガサ。内側は合皮が付着しベトベト。なのでパイピングも交換します。

ルイヴィトン内装交換
ルイヴィトン内装交換

バケツ型から使いやすいトート型にリメイク

ルイヴィトン内装交換

今回は内装交換のみではなく、リメイクをしてなおかつ内装交換なので鞄のサイズ自体が変わります。なので外装の本体も分解していきます。この鞄の特徴でもある丸底を外します。

ルイヴィトン内装交換
ルイヴィトン内装交換

丸底部分には硬質な底板が内部に仕込まれていて形状を保っていました。

ルイヴィトン内装交換

底鋲は割りピンという仕様なので再利用できなくもないのですが、固定する際にピンを再び直角に折り曲げるので、金属疲労で折れてしまう可能性や、リメイク後の鞄にはちょっとゴツいので底鋲も交換します。

ルイヴィトン内装交換
ルイヴィトン内装交換

リメイクサイズを決める

今回のご依頼の際には、ネットに上がっている同様のリメイクをした事例の画像を参考に提示して頂いていたので、それを参考に寸法を割り出していきました。

丸底でしたし実際に分解しないとどの程度のマチ幅が確保できるのか、高さがどの程度になるのかなどは確定できません。

画像はリメイク後にどんな感じになるのか分解後、余り部分を内側に折り曲げて確認している状態。丸底より断然使いやすそうです。ご依頼主の方にも画像で確認して頂きました。

ルイヴィトン内装交換

寸法が確定したので裁断していきます。裁断といってもあまりカットはしません。

裁断と加工

ルイヴィトン内装交換

底の部分は1.5cmのみカット。これでそんなにサイズが変わるのか?と思われそうですが、高さにして約10cm小さくなります。角はマチを作るので四角く裁断。

ルイヴィトン内装交換
ルイヴィトン内装交換

さすがルイヴィトン、正確に作られています。正確に作られているとリメイクする時にはありがたいです。左右対称でなかったり変に歪んでいると基準をどこに設定して裁断するのか悩みますので。

ルイヴィトン内装交換

ただ本体のトアル地は保管の状態が悪く潰れて折り癖が付いていました。こういった癖はその部分からトアル地が痛んでくる可能性があるので保管の際はお気をつけください。

今回カットしたのはこれだけ

ルイヴィトン内装交換

底周辺のベルトの縫製を解いて少しバラします。

ルイヴィトン内装交換
ルイヴィトン内装交換

外したベルトの革を少し漉きます。これは底部分のマチの縫製をする際に二枚(四枚)縫い合わさるので、そのままの厚みで縫い合わせてしまうと厚みがボコッと出てしまうのでそれの調整をしています。

ルイヴィトン内装交換

で、また元の状態に戻して本体に縫製します。

ルイヴィトン内装交換

内装の製作

もともとはベージュ系でしたが、以前行った修繕事例の赤系のバージョンをご覧いただきそちらに決定。上部は元の設定のままで底周辺にマチができることにより寸法が変わっています。

ルイヴィトン内装交換
内装の寸法確認

念の為、安い生地で内装を試作し収まり具合を確認。問題がないので本番の生地を裁断。大きめの鞄だと赤系の生地は面積的に目立ち過ぎるかもしれませんが、今回のような小振りの鞄であればアクセントでトアル地との相性がいいように思います。

ルイヴィトン内装交換

オリジナルの革パーツを移設していきます。元の縫い穴にひと針ずつ針を落として縫製していきます。

ルイヴィトン内装交換
ルイヴィトン内装交換

オリジナルのファスナー付きポケット、フリーポケット共に移設完了。やはりオリジナルの刻印入りのレザーパーツがつくことでグッと雰囲気がよくなります。

ルイヴィトン内装交換

内装が完成したらリメイク済みの外装に組み入れます。

ルイヴィトン内装交換

組み立て

ルイヴィトン内装交換

一度試し生地で寸法を確認しているので収まらないわけはないのですが、生地の厚みが違うので多少誤差が生じる場合がありますが、ピタッと。

ルイヴィトン内装交換
ルイヴィトン内装交換

ヌメ革の色について

ヌメ革が使用された製品の修理の際に問題になるのが焼け色。特にルイヴィトンのナチュラルなヌメ革の場合は、経年変化で日光に焼かれて色がそれぞれ変化しています。なので同じ製品でも使用環境によって色がまちまちになっています。

ヌメ革のエイジング過程

ヌメ革
  1. 新品・白っぽいベージュ
  2. 初期・ベージュ系
  3. 中期・イエロー系
  4. 後期・オレンジ系
  5. 晩年期・ブラウン系

今回は当店エイジング指標では、❹レベル相当かと思います。

ルイヴィトン内装交換

使用するヌメ革は時間をかけてピット槽で鞣したフルベジタブルタンニンレザーを使用します。ですのでオリジナルのヌメ革同様に年月と共に色の深みが増して育っていきます。

ルイヴィトン内装交換

ちなみにですがオリジナルでもすでにベルトの部分と底部分のヌメ革でこんなに色の差異が生じています。

ルイヴィトン内装交換
エイジングの違い

同じタンナーの同じ鞣し方法でもこんな感じでエイジング具合が違ってきます。牛も個体差があるのでタンニンが浸透しやすい奴もいればそうでない牛もいたりという感じなんでしょうか。

続・組み立て

ヌメ革を裁断し厚みを調整、パイピングの幅もオリジナル通りになるように確認しセッティング。

ルイヴィトン内装交換

メーカーではこんなアナログなことは行っていません。量産する場合は縫製しながら自動的にパイピングも行えるように専用のバインダーやラッパと言われるアタッチメントを作って製造しています。

ルイヴィトン内装交換

私も一応パイピング用のアタッチメントは持っているのですが素材の種類や厚み、硬さ、パイピングの幅、縫製物の厚みなどなど、全て適した設定でないと綺麗に縫えません。

もちろん修理では毎回違う条件で縫製する為、アタッチメントを用意することはできないので、アナログにちまちまとやるしかありません。ただ時間はかかりますがアナログ手法で行えば間違いはないのですが。

ルイヴィトン内装交換
ルイヴィトン内装交換

内装交換とリメイク完成

リメイク後のサイズはマチ幅が100mmあります。マチ幅を確保すると必然的に高さが減少します。高さは360mmだったのが270mmになっています。

ルイヴィトン内装交換
ルイヴィトン内装交換

丸い底から適度なマチありトートにリメイク。このぐらいのサイズは使い勝手がいいかなと思います。

ルイヴィトン内装交換

底板を入れ直し、擦れ予防に小振りの底鋲を新規で取り付けています。

ルイヴィトン内装交換
ルイヴィトン内装交換
ルイヴィトン内装交換

内装に移設したオリジナルのヌメ革のパーツは、外装のヌメ革に比べ日光が当たりにくいのであまりエイジングせず明るい色のままです。

お手入れは忘れずに

修理品の補修完了後には保湿を行なっています。ルイヴィトンをご使用の方で定期的にヌメ革の保湿を行なっている方というのはどの程度いらっしゃるのでしょうか。

修理に持ち込まれる状態だからなのか、ほとんどのルイヴィトンのヌメ革はカサカサしています。

ルイヴィトン内装交換

革は乾燥して表面がひび割れてしまうとそれはどうにもすることができません。ひび割れを挽回することはできないので保湿メンテナンスをして現状維持できれば、というところです。

ですので革製品は痛んでも痛んでいなくても定期的な保湿が必要不可欠かと思います。

人間であれば保湿をしなくてもある程度は勝手に新陳代謝が行われますが、革の場合はこちらから添加してあげなければ乾燥していく一方です。

サフィールレザーローション

保湿メンテナンスで当店で使用しているのは、サフィール社のユニバーサルレザーローション、革製品全般に使用できます(起毛革などは不可)。靴の場合も乳化性のクリームで磨く前の下準備として使用しています。

今回痛んでいて交換したヌメ革はパイピング部分のみですが、縁なので荷物の出し入れや腕で擦れて痛んだのだと思います。他にストラップ仕様の場合、美錠の固定穴付近は負荷も掛かり可動もするので傷みやすい部分となるので特に保湿が必要です。

ルイヴィトン内装交換
傷みやすい美錠の穴付近

今まで保湿を行なったことがなく初めて行う場合には、乾燥しきっているのですごく吸い込むと思います。保湿クリームが塗布されたところと、されていないところがあると色ムラになりやすいので全体に均一に伸ばしてください。

ルイヴィトン内装交換

過去に雨ジミ等がついている場合、カサカサに白く乾燥した状態だとシミも目立たないのですが、保湿することで雨シミなどが目立つようになる場合があります。

ルイヴィトン内装交換

だからと言って保湿しないで乾燥させ続けひび割れさせるのか・・・。

悩ましいところではありますが、保湿をするとワントーン色が濃くなるので、その後のエイジングで色が深くなり徐々にシミも目立ちにくくなることもありますので、そういったことも加味して革を育ててみてはと思います。



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