縫い目で割れているので少しパーツを大きくして補修する。 トアル地篇

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根革の裂け
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トアル地は劣化にも注意

定番の根革の裂けです。根革とはストラップなどが連結する付け根のパーツです。すでに他店にて2回か3回ほど同じ箇所を修理しているということですが、縫い目付近で本体が割れ始めています。同じ箇所を何度も縫い直しているのも原因ですが、本体のトアル地も若干ですが劣化し始めて硬化しているので、それの影響もあると思います。

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ダミエやモノグラムで使われている素材はトアル地と呼ばれ、エジプト綿を塩化ビニールコーティング(PVC)した素材です。塩化ビニール樹脂は水と反応し加水分解していくので、高温多湿の日本では使用環境や保管状況では劣化しがちです。ベタついたり生地が硬くなっている場合は注意です。押し入れに仕舞いっぱなしだと劣化が進行するので風通しの良いところで保管した方が良いです。

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前回交換して(他店にて)1年ぐらいでまた壊れてしまったと。1年で壊れてしまうというのは非常に重い荷物を運んでいるか、もしくは強度不足か。裂けている側の根革には伸び留めのナイロンテープが入っていませんでした。両側交換されていますが片側だけ入れ忘れでしょうか・・。

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割れを隠して補修

トアル地が裂けてというか割れています。また同じ位置で補修してしまうと完全に裂けてしまいそうです。ではどうするかですが、パーツを一回り大きくして割れより外側で縫製するようにします。ご依頼主さんにもパーツが大きくなることは了承していただいて、なるべく壊れ難いようにして下さいと。

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トアル地の割れ

割れている箇所を隠して尚且つ新たな縫い目に掛からないようなパーツのサイズだと、横幅を5.0mmずつ拡大する必要があります。しかしストラップの金具と連結する上部の幅は変えられないので辻褄をどう合わせるか・・・。

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作成した革のパーツの全体にナイロンを貼り合わせ、尚且つ負荷の掛かるループ部分にはナイロン生地を4重に重ねているのでこれでパーツが裂けてしまうようであれば、その前に負荷が掛かり過ぎなので鞄自体が壊れるだろうと思います。

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八方ミシンにて本体と縫製。

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根革交換完了

横幅は拡大していますが全体の形状は変えていないのでそんなに違和感はないと思います。

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鞄の壊れる箇所は決まっています。根革・持ち手・角擦れ がリペアビック3という感じです。それと内装が合皮であれば内装交換、荷物をパンパンに入れていたり無理に開け閉めしていればファスナーの壊れという具合です。それと擦れ関連を追加すると補色補修というぐらいでしょうか。

鞄修理依頼・BEST 5

  1. 根革の裂け
  2. 持ち手の損傷
  3. 底の角擦れ
  4. 内装交換
  5. ファスナー関連

根革の場合は重さに耐えきれずという場合もありますが、よくあるのは保湿が行われず革が乾燥し柔軟性がなくなりささくれてそのまま破断、という過程が一番多いかと思います。

これはお手入れすることで延命することができますので定期的に保湿を行なっていただければと思います。ミンクオイルではなく保湿用のレザーローションをお使い下さい。

オススメの保湿クリーム

ミンクオイルでは油分が多すぎるので使い方を誤ると革の繊維をかえって痛めてしまいます。またミンクオイルはその名の通り動物性油脂なので、カビ菌の栄養にもなってしまうので高温多湿の日本では使わない方が無難かと思います。

行李
行李

トアル地もそうですがフランスの乾燥した風土では適しているのかも知れませんが、日本だと柳や竹で編まれた通気性の良い行李のようにその土地土地で適した素材というものがあるのだな、と思う今日この頃・・・。

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