ルイヴィトン・サックプラ用のショルダーストラップ製作篇

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サックプラ用のショートショルダーストラップ

別記事のサックプラの内装交換と合わせてご依頼いただいたショルダーストラップのオーダー。通常ストラップのご依頼だと100cmから120cmぐらいの長さでご依頼いただきますが、今回は最短で50cm最長が63cmという設定がご希望。ストラップの幅も婦人物ですと20mmが一般的ですが今回はしっかりした感じがいいということで25mm設定になります。

ショルダーストラップの長さは(調節幅)は一般的には100から120cm程度

試作

まずは試作。美錠はルイヴィトンのストラップでしばしば使われているような管美錠を探しましたがあるにはあるのですが、いまいち高級感がない感じでしたので少しぽってりとした感じの色気のある美錠を選択しました。

美錠に合わせて革の厚みやループ部分に必要な長さやベルトの通り具合を確認。革は世界最大規模のピット層を有する栃木レザー社のフルベジタブルタンニンレザーを使用します。このヌメ革はオリジナルの革同様に(もしくはそれ以上?)時間をかけてじっくり作られたタンニン鞣しのヌメ革になります。

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本番

試作で特に問題も見つからなかったので本番に取り掛かります。形状が特殊な持ち手の場合などは2.3回部分試作を繰り返す場合もあります。持ち手の交換やストラップの製作は補修というよりはオーダーと同じなので、基本的に同じものは一回しか作らないことが多く、その始めの一回でベストなものができるよう試作を繰り返します。

ベルトの製作の場合は同じ幅のベルトを貼り合わせるのではなく、基本となる表側に大きめのもう一枚を貼り合わせその断面に合わせてちり(余分な部分)をカットします。同じ幅の二枚を貼り合わせても革は歪むので(特に長いと)ずれたり断面のカットの角度も揃わないのでこの方法で裁断した方が狂いは少ないです。もしくは二枚貼り合わせてまとめてカットするか。

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裁断後に断面を削って整えていきます。削ると革は繊維質なので毛羽立ちます。今度はそれを布海苔などの目止め液を塗布して繊維を締めていきます。

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削ると毛羽立ちます
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コバ面を締めた状態

必要に応じて熱したコテなども用いて断面をより密にした後にルイヴィトンぽい赤褐色に染色します。

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美錠側のベルトも断面を仕上げて美錠を取り付けていきます。ルイヴィトンのオリジナルではヌメ革を信頼し過ぎなのか、ヌメ革だけで負荷の掛かるストラップの付け根や美錠部分などが固定されていますが、一般的にこのような部位については革が伸びてしまわないようにナイロン素材などを挟んで補強しておきます。

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革は繊維状なので引っ張られる方向へ徐々に伸びていってしまいますし、あまりお手入れを行われていないと乾燥しひび割れにより革が裂けていってしまう場合もあるので、ナイロンなどで補強は必須となります。使用する革の厚みや鞄の大きさや入れる荷物によってもループ部分はナイロンの他にも芯材を複合的に合わせたり革を二重にするなど用途に応じ補強具合を変える必要があります。

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ミシンの縫製もオリジナル通りに黄色の糸を用いて縫っていきます。

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最後に穴あけ。これでミスると初めからやり直しになってしまうのでセンターになっているか、穴の間隔は狂っていないか、ちゃんとオーダー通りの長さになるかなど最終の確認をしてポンポンポン・・・。

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ストラップの一般的な設定としては穴は5個、間隔は25mmなので調節できる長さは10cmとなります。10cmなので鞄の上下の位置としては約5.0cm変化させることができます。穴を増やすことはできますがあまり多いと見栄えも悪いので、「ほんとにその長さは使う長さなのか?」を自問自答して個数はお決めいただければと思います。ちなみに長さが固定のストラップの方が費用は安く出来上がります。

長さ調整仕様の基本設定は、25mm間隔で穴が5個(調節幅は10cm)

ショートショルダーストラップ完成

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引っ掛けるナスカン金具の方はルイヴィトンのストラップで使われているような形状を2つご提案し、オリジナルによく似ているこちらの金具を選択されました。

使用する長さと美錠の位置

今回ストラップの長さが50から63cmと短めの設定でしたのでその場合、美錠側のベルトと長さ調整の穴が空いているベルト側の長さ、それぞれの長さの割合をどうするか悩みました。というのは通常の長いショルダーストラップ(100から120cm)でもそうなのですが、使用の際に美錠の位置が肩の骨のところにきてしまうと痛むんではないか?という心配があります。

製作の際は一番よく使う長さを伺い、その他の長さで使用した場合でも美錠の位置が悪くならないようにそれぞれのベルトの長さを割り振って製作していますが、今回のショートストラップだとストラップ自体の長さが短いので少し長さを調整しただけでもすぐ肩付近まで美錠が上がってしまいます。なので今回は画像でも分かる通り美錠側のストラップは極端に短めの設定になっています。

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ベルトループを二つ付けることで長さを短く調整した際にベルトの余りがぶらんぶらんしないようになっています。

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ショルダーストラップの取り付け方法

お問い合わせの際のはじめは私の想定では、鞄本体にナスカン金具を引っ掛けるDカンパーツを鞄の両側マチ部分に取り付けると思っていたのですが(現行品はそのようになっているようです)、そうではなく持ち手の付け根金具のカンに引っ掛けて使われるということで、なるほどその使い方もできるんだなと。

対角線で取り付ければストラップが変にねじれずに身体にも添い安定して使えると思いますし、鞄本体側は加工せずDカン二箇所の取り付け費用もかからないのでこの方法がベストかなと思いました。

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ヌメ革の色について

製作したストラップの革はルイヴィトンの新品時のようにベージュ色ですが、徐々にエイジングをしてオリジナルの革同様に飴色に焼けて馴染んでいきます。下画像は敷いている革がエイジング前で針が刺さっている革は約1年経過した状態で色が濃くなっているのが分かると思います。

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耐候性のあるクロム鞣しの顔料仕上げの革と違い、すっぴんのヌメ革の場合はこんな感じで日々革が育っていくというのも面白いところです。新品の段階で完成しているというよりは、使い込んで自分色に完成させていくという感じでしょうか。

ルイヴィトンのヌメ革の断面は赤褐色に染められていますが、あれって新品時点だとちょっと色がきついかなと個人的には思います。しかしそれも5年10年と使い込んでいくうちに革がエイジングをし色が深くなった時に、あのきつめの赤褐色も落ち着いてちょうど互いの色味のバランスが良くなるように設計されているのか?と思ってみたりもしている今日この頃です・・・。

ヌメ革のエイジングによる変化

今回のショルダーストラップ製作に使用した革は❶と❷の中間程度の色の革です。

ヌメ革
  1. 新品・白っぽいベージュ
  2. 初期・ベージュ系
  3. 中期・イエロー系
  4. 後期・オレンジ系
  5. 晩年期・ブラウン系

❸から❹程度の色の革を使用した事例は以下の記事をご参考にされて下さい。修理で持ち込まれるルイヴィトンのヌメ革の状態は乾燥して色褪せている場合が多く、大抵の場合は仕上げのお手入れで保湿を行うと現状より色が濃くなります。

補修する際は保湿し少し色が濃くなった(本来の状態)状態に合わせて革の色を選択しています。色が濃くなるのが嫌、ということであれば保湿は行いませんが、どんどん乾燥しひび割れなどが進行してしまうので保湿をしないという選択肢はあまりオススメはできません。(保湿をご希望されない場合はあらかじめお伝えください。基本的に保湿を行いご返却しています)

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