ファスナーの名前
パーツの名前が分からないと、どの部分のことを言っているの?になってしまうのでまずは簡単にご案内。ファスナーは主に左の樹脂ファスナーと金属ファスナーがあります。
- エレメント・・金属や樹脂で左右が噛み合うことでファスナーが開閉する
- テープ・・・・主にポリエステル素材、エレメントを固定している
スライダーが動くことでエレメントが噛み合ったり離されて開閉します。スライダーとファスナー共にサイズがあり3号、4.5号、5号、7号などでそれぞれの規格が合わないと使用できません。樹脂と金属ファスナーでもスライダーの規格は異なるのでそれに色展開まで行うと在庫が大変なことに・・・。
ファスナー交換の際は、テープの色・エレメントの種類・スライダーの種類・サイズのそれぞれの組み合わせになるので、テープの色が定番のブラックやダークブラウン、ブラウン以外の場合は基本的にYKKから取り寄せになります。
スライダーの引き手部分のデザインもたくさんあります。このままついている製品もあればDカンをかませて革の引き手を繋げていることも多いです。
ファスナーが閉じない場合のQ&A
ファスナーの甘噛み
今回のルイヴィトンのブリーフケースはスライダーを動かしても閉じていかないケースです。目視で確認するとエレメントが一箇所痛んでいそうだったのでそれが原因だとファスナー交換になってしまうのですが、新しいスライダーを差し込んで動かしてみると問題なく閉じることができました。
ファスナー交換の場合はファスナーが縫製されている部分を全て解かないと交換できないので、それなりの費用になってしまいます。
スライダーを入れ直す場合は端の部分の縫製を分解し、エンド金具を外すと差し込めるようになります。スライダーの交換で直る場合の原因としてはレールの摩耗と変形が考えられます。
エレメントもスライダーも金属製の場合は特に、日々の開け閉めで金属同士が擦れてレール部分が徐々に摩耗していきます。エレメント側も同様に摩耗しているので互いの摩耗度合いが激しいとスライダーを交換しても閉じていきません。
ファスナーが閉じる原理としては左右にあるエレメントが噛み合って閉じていきますが、摩耗していたりレールが変形しているとその噛み合わせが甘くなり閉じても開いてきてしまいます。閉じたようでいて開いてきてしまうあの現象です。
スライダーの取り寄せ
使われているスライダーの色はブラックメッキのような、ガンメタルのような微妙な色なので在庫でのご用意がありませんでした。ルイヴィトンクラスになるとスライダーの色も別注なのか数種類あるYKKのカラーの中でも全く同じ色というのは存在しないようです。
YKKのファスナーカタログによると、ブラックニッケルとアンティークシルバーのどちらかの色が近いようですが、画像では違いが分からなかったのでとりあえず2色取り寄せてみる事に。引き手部分はクロコ柄の革が付いているので取り寄せたスライダーの金属部分を加工し革の引き手を連結します。
取り寄せたスライダーを差し込み、再度開け閉めに問題がないか確認。分解した鞄の端を縫製しファスナーのエンド部分を留め具でかしめて交換完了となります。画像のかしめる道具ですが、このエンド金具をかしめるというだけの専用の道具です。
ペンチなどでも代替えできそうですが一応専用に作られているだけあって、スライダーをまたいで奥の留め具をかしめられるのであると便利ですが、ニッチな道具なのでそこらへんのペンチよりは値段が高いです。
ニッチな工具とワニの思い出。
ニッチな道具にはそこまで需要がないでしょうから仕方がないとは思います。価格は需要と供給で決まるものですから。鞄の道具もそうですが靴の道具はもっとニッチな香りがします。
16年ぐらい前になりますが、靴資材の商店で工具を購入する際に店主に聞いた話ですが、靴の工具というのは他の業界の工具を作る職人さんの手の空いた時間にお願いして作ってもらえている状況だと。
そしてその工具を作ってくれる職人さんがみなさん高齢で引退し始めているので、在庫切れになった工具はそのまま廃盤になってしまったり、入荷未定のままで注文の数がまとまればお願いして作ってもらえるかもしれないと。
すでに16年前の時点で靴を作る際に使うワニという工具が数ヶ月待ちという状態になっていました。と言っても海外製品や質の悪い鉄を使った廉価版は当時も今もたくさん流通していますが。
ワニという工具はまず壊れるものではないのですが、かと言って無いと大変困るので、その話を聞いてその時に一つ予備で購入しておきました。
数ヶ月待ちなのになぜ買えたか?
当時、私は最寄りの靴学校に通っていたので、その行き帰りに何か目新しい材料や道具はないかと、用もないのに毎日のように顔を出していたので融通してくれたんだと思います。ちなみにその前に店を訪れていた同級生は数ヶ月待ち、と言われていたようで悪いのでその事は内緒にしておきました。
靴の修理などで使う強力な接着剤は、乾燥させてから貼り合わせる前に高温で温める必要があるのですが、その温めるヒーターもニッチな機材なので新品で購入すると数万円してしまいます。
商店のご主人に相談すると、「そんなの作れるよ」と一斗缶とコタツのコンセントを利用して3.000円程度で作ってくれ、10年以上経った今でも現役で使えています(不思議と電球が一度も切れていない)。
ちなみに当時の時点で朝ドラの昭和のセットみたいな味のある佇まいのそのお店は、検索してみると去年で75周年だったということで、そりゃセットだなと。
先日ヤフオクでその商店のワニが出品されていましたが、その価格は私が当時購入した三倍の値段になっていました。やはりその後、作られなくなったのかもしれないなと。
私のワニは当時のワニがまだ現役で使えているので、予備のワニは新聞紙に包まれ道具箱の底で出番を待っている次第であります。
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