いつもの内装ベタベタ劣化状態
サクップラの劣化した合皮の内装交換と合わせて、現行モデルのようにストラップ仕様にDカン金具の追加とヌメ革のレザーストラップのご依頼。
ちなみに現行のサクップラの内装は素材が生地に変更されているようです(違うモデルもありますが)そもそもなんでこんな高級品に必ず劣化する合皮を今まで用いていたのか・・・
劣化させて買い替えさせる時限タイマーなのかなと勘繰ってみたり。これはルイヴィトンに限らずエルメスなどでも内装に合皮が使われているのでどこも似たようなものですが。
内装は一見大丈夫そうに見えますが、触るとベタベタしています。ベタベタしていたらもうタイマーは時間切れです。ベタついてきていたら表面の皮膜はじきに剥離し始めますし、合皮の塗料が荷物にも付着し始めます。
革や金具にベタベタの塗膜がついても綺麗に取り除けます。
分解
まずは縫製を解いていきます。
合皮というのはガーゼのような基布に革っぼい色の塗膜が張り付いている状態の素材です。その塗膜は合皮の製造から2〜3年で劣化が始まります。
劣化は鞄を製造してからではなく、合皮が製造されてからというところがポイントです。保管しているだけでも劣化が進行していきます。
以前の当店の補修方法では本体はバラさずに箱状のままで内装交換していましたが、現在は分解して交換する方法に変更しています。再度組み立てる手間は増えますが、一度バラバラにしてしまった方が作業性が向上するという理由で。
内装の合皮を全て取り除いた状態。持ち手付け根の縫製の裏処理など見えない部分ですが丁寧な仕事です。それなのになんで必ず劣化する合皮を使うのだろうかと・・・。
サクップラはトアル生地(モノグラム)に合皮を貼り付けているので、それを剥がしたり縫い糸をカットしていると塗膜の劣化したベタベタが道具に付着したり手に付着して厄介です。劣化した塗膜は柔らかいクレヨンのような感じです。
内装製作
現行のサックプラBBは内装が赤系なので今回はそのようなイメージで。
ロゴとパーツは移植します。
旧サクップラはポケットがないので不便でしたが、内装交換の際にはスマホなど入るような大きめのオープンポケットを一つ追加。(ファスナーポケットなどご希望の仕様で製作が可能です)
本体と縫製してまずは内装交換が終了。
ヌメ革
ヌメ革は経年により色が焼けて深みが出てきます。
新品時のベージュ系の色で製作し、同様に経年により色が焼けていくのを楽しむのか、それとも現状の焼けている色味に合わせたヌメ革を使用するかの選択ができます。
今回はオリジナル部分のヌメ革が綺麗に焼けていて、経年用のヌメ革と色味が近かったのでキャメル系のヌメ革で製作となりました。
ルイヴィトンのヌメ革は同じモデルでも、お手入れや使用環境により経年変化によるヌメ革の色味はまちまちです。ブラウン系になっているモデルもあればオレンジ系、マスタード系など様々。
環境による色味の変化以外にも、製造年代によるヌメ革自体の鞣し方によって経年による色の変化の差異はあるかと思います。
レザーストラップ
ナスカンはルイヴィトンでよく使われるオリジナルに近い形状の金具がご用意できます。
- ナスカン/Dカンに引っ掛ける金具
- 美錠/長さを調節する固定金具
- Dカン/ナスカンを引っ掛ける金具
ストラップの部分試作。ベルトの厚みや硬さ、芯材の具合を確認。
ルイヴィトンの平ベルトやストラップはあまり補強材が使われておらず、革が両面貼り合わされているだけの頼りない作りが多いです。もちろんそこは真似をせずに、それぞれの箇所に適した補強を行なって製作します。
Dカンパーツの取り付けは手縫いで行います。
内装交換とストラップ使いのカスタム完成
ちらっと見える内装の赤がいい感じです。
大きめのオープンポケット。スマホが楽に入ります。
経年により本体のモノグラム生地に皺やクセがついていたりへたっているので、内装を取り付ける前に底面とマチ部分には補強の芯材を貼り合わせています。
内装カラーがワインレッドの場合
ストラップが使えるようにDカン金具の追加。
新たに製作したレザーストラップ。経年変化したハンドル部分のヌメ革と色味は完全に一致はしませんが雰囲気は合っているかと思います。
ルイヴィトンの修理の際に最近よく伺う話ですが、購入当時(10年とか20年前)の値段からすると、現在は円安やインフレで同じようなモデルの販売価格が2倍やそれ以上になっているとの事で、その当時の価格を知っていると今から新しい鞄を購入する気にはなれないとか。
例えば2011年だと1ドル75円なのでこのタイミングで購入された場合は、現在の円安(150円)にインフレの相乗効果で価格は4倍ぐらいの体感なのかもしれません。
ルイヴィトンの定番シリーズは時代に関係なく使えるデザインが多いので、痛んでいる部分を補修すれば今でも使い続けられます。(サイズが使いづらければリメイクも)
お母さんが若い頃に購入したブランドバックを娘さんが押し入れから見つけ出し、補修して使われるというパターンも最近よくあります。若い世代の方には何周かして「いま」のアイテムなのかもしれません。
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