悪い靴の履き方 ALDEN編

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靴紐を解かない人

踵の内側や履き口を痛める人の代表的な履き方は靴紐を解かずに脱ぎ履き。靴紐を結んだまま脱ぎ履きする人は大抵、指をかけて履いたり、立ったまま履くので踵(カウンター)を踏みつけて潰してしまう人が多いです。

オールデンかかとの擦り切れ

悪い靴の履き方

  • 靴紐を解かないで脱ぎ履き
  • 指をかけて履く
  • 踵を潰してしまう

そして、そのような履き方をされている靴は結び目が解けないように固結びされています。

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指を引っ掛けて履くと、指一本分の距離を革が無理やり伸ばされます。そうすると履き口に負荷が掛かり、最悪は裂けてしまいます。履き口周辺はそもそも革が伸びないように補強されています。伸びない部分を伸ばそうとするので必然的に裂けます。

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パイピングも擦り切れています。

今回はアキレス腱あたりの履き口が擦り切れています。指をかけて履いているとまずはフチが裂けがち。そしてくるぶしの下あたりも耐えきれず裂けてきます。この部分で裂けてしまうと見栄えを変えずに補修するのは難しいです。

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くるぶしの部分

そのほかに履き方の問題ではなく、裏革にカウンター(芯材・月型)の段差による擦れが出てしまう靴があります(赤矢印部)

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カウンターの擦れ

カウンターとは踵が左右にぶれない(倒れない)よう表革と裏革の間に取り付けられているパーツで、革や樹脂系のものがあります。端の部分は厚みの段差で当たり(擦れ)が出ないようにペラペラに薄く加工するのですが、既製品だと厚みが残っている場合があり(または薄くできない)、今回のように擦れが生じてしまう場合があります。

主な履き口の仕様

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ギザギザはパイピングの折返し部分

紳士靴の履き口の主な仕様は4パターンあります。玉縁、パイピング、切りっぱなし、折り込み。

玉縁とパイピングはデザインの要素と補強を兼ねています。どちらも履き口に別パーツの帯革を取り付けます。切りっぱなしは革を裁断したまま、折り込みは表革の端を5.0mm程度折り込みます。

主な履き口の仕様

  • 玉縁
  • パイピング
  • 切りっぱなし
  • 折り込み

いずれの仕様も通常は伸び止めテープを併用しているので、切りっぱなしだからといって強度が低いというわけではありません。

今回のように別パーツが組み込まれていると補修は手間がかかります。今回だと裏革の補修とパイピングの交換が必要になるので。

履き口の治し方

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パイピングの縫い目と裏革の縫い目が別々にあるのでそれぞれ縫製を解きます。

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パイピングは羽の部分から履き口と全周繋がっています。これを全部を交換すると羽の付け根を分解し、裏鳩目も恐らくパイピングにかかっているので紐穴周辺も分解・・・かなり大掛かりになるので補修費用は相当かかります。

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水色部分がパイピング

ですので通常は傷んでいる周辺のみパイピングを途中でカットして交換することになります。

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オリジナルのパイピングの革の厚みは0.6mmと薄めだったので、少し厚めの0.8mmにして耐久性を向上しておきます。恐らくオーナーさんは変わらず紐を解かずに履かれると思いますので。

0.2mmって、と思われると思いますが革の0.2mmの差って案外あるんです。ならもっと厚い方が、ですが1.0mmにするとパイピングがぼてっと太くなり過ぎてしまうので、今回は0.8mmが妥当なところです。

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パイピング縫製

新しいパイピングを縫製します。パイピング同士の連結部分はなるべく段差が出ないように革を漉いておきます。

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まずはパイピングを縫いつけました。オールデンのパイピングは所々で歪んで太さが違っているので厄介です。履き口に対して均等な幅になるように設定しても、元の縫い目がずれているので補修の際もそれなりに歪みが出てしまいがちです。

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縫いつけたパイピングを元のように内側に倒していきます。

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続いて裏革を縫い付けます。

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裏側の縫製の仕方も2通りありますが、今回は縫製部分を革で覆う方法にしています。縫い目が露出する方法だと今回のオーナーさんの履き方では糸を擦り切ってしまい痛めてしまうのが明らかなので。補修の方法も履かれている人それぞれの履き方に合わせて仕様を選択しています。

補修は完成、あとは・・・。

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接着した裏革の下側は中敷の下に隠れて抑えられるように少し残します。

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一応補修は完成しましたが・・・、見ての通り本体(コードバン)がカサカサです。これもどうにかしないとです。

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かかと以外も当然、靴全体がカサカサで擦れ色褪せています。

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まずは保湿。使用するのはいつもご紹介しているサフィール社のユニバーサルレザーローション。とりあえずこれは一家にひと瓶ですね。乾燥がひどいので多めに塗布して塗り込む感じ。コードバンは牛革とは表面の処理が違うので革の表面を寝かしつけるイメージで塗り塗り。

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ユニバーサルレザーローション
ユニバーサルレザーローション

とりあえずカサつきを抑えてしっとりさせます。乾燥しているウェルト部分も保湿。

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次に色褪せを補うのにサフィール社のビーズワックスファインクリーム(乳化性の靴クリーム)を塗布。色はバーガンディーとかダークブラウンなどを雰囲気に合うように混色。

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とりあえずレザーローションと乳化性の靴クリームでこのぐらいには戻せます。

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あとはお好みでつま先や踵をワックスで鏡面仕上げにしてみたり(今回はクリームのみ)。お手入れ不足で所々擦れて色褪せていましたが、それをそのまま磨き上げることで、透明感の中にビンテージ風な濃淡になっているような・・・。

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コードバン専用の乳化性の靴クリームも販売されていますが、通常の乳化性クリームよりオイル分が多めに添加されているだけのようなので、値段もしますし、手持ちの乳化性クリームとレザーローションの併用でも事足りるかと思います。

踵周りの補修は手間が掛かるのでおのずと費用が高くなります(左右セットの場合がほとんどですし)。なのでなるべく悪い靴の履き方をされない方が懐には良いかと思う、今日この頃です。

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