あるある
オールデンのつま先あるある言いたい。
つま先がすぐ減りがち
つま先がすぐ減って焦りがち
つま先のウェルトまで減らしてしまいがち
という感じでしょうか。大抵の方はその後、検索してビンテージスチールという補強にたどり着くと思います。ご来店の際に取り付けた方がいいのかどうかまだ迷われている方には、食い気味で『取り付けた方がいいですよ』と。
よりベターなのは、ハーフソールを併用したハーフソールスチール併用仕様をお勧めしています。ハーフソールスチール併用仕様が現状考えうる、最強の革底保護仕様そして費用対効果に優れた仕様かと思います。
ハーフソールスチール併用仕様のメリット
- つま先の保護ができる(金属なので当たり前ですが)
- 革底が摩耗しない
- 底縫いの糸が擦り切れない
- 基本的にオールソールの必要がない
- 革底からの雨の染込みでアッパーに雨シミが出来難い
- 滑り難い(予想外の怪我をしない)
- 日々の安心感がある(摩耗という名の恐怖)
ハーフソールのみではダメなの?
つま先の摩耗はそのほとんどが履き始めの初期の段階でひどく摩耗させてしまう場合が多いいです。人によってはその初期摩耗段階でウェルトまですり減らしてしまって、ウェルテッド製法の意味がなくなってしまう方も・・・。
履き始めが摩耗しやすいのは靴底の返り癖がついていないからです。返り癖というのは履き込むことで靴底が屈曲してつま先が少し持ち上がっている状態です。
その状態になれば歩行の際に必要以上につま先が地面に擦れて摩耗することもないのですが、癖が付いていない新しい状態ではつま先が自分の歩行に合わせて持ち上がっていないので、歩行の際にズリズリと余計に削れていってしまいます。
そしてそれがハーフソールのみでは癖がつく初期段階の摩耗で、つま先部分のラバーだけをすぐに擦り減らしてしまいがちです。(初期摩耗はハーフソールのみでは役不足)
なので特に摩耗しやすいつま先には金属のビンテージスチールを配することで、それぞれの交換する期間を延ばしランニングコスト抑えることができます。
ちなみにビンテージスチールを固定しているネジ頭が摩耗して見えなくなっていても交換には問題ありません。抜けないネジはネジ頭ごと削ってしまうので。
この時に油断すると、削りたてでもの凄く熱くなったスチールを不用意に触ってしまい、つい放送禁止用語を発してしまう事があります。
併用仕様の交換スケジュール目安
よくある交換サイクル
新品の状態で取り付けるのがベスト。
すでに履いた状態でつま先が摩耗していると追加の補修費用がかかる場合があります。
ビンテージスチールの先端がペラペラになったり欠け始めたら交換の目安。
この段階ではまだハーフソール部分は厚みが残っていることが多い。それだけ金属でもつま先が摩耗し易いという事になります。
2回目のビンテージスチールが摩耗限界に到達する頃には、初回のハーフソールが薄くなり中央部分がペコペコとしているかもしれません。そのタイミングで両方交換するのがベストな周期です。
個別の場合の交換費用の違い(2024.05.18 時点)
・ハーフソールスチール併用仕様:6.500円
・ビンテージスチールのみの交換:3.500円
・ハーフソールのみの交換:3.500円
ただ靴底の摩耗度合いは人それぞれ歩き癖があります。何も補強せず革底のまま履かれて靴底に穴が開く状態になっても、つま先がまだ減り切っていないという方もいます。
日々履かれている靴を見て自分がどのような歩き方なのか、いつもどこが傷みやすいのかを確認されて補修計画を立ててみて下さい。
人それぞれではありますが、Q & A 。
人それぞれで歩き方も使用環境でも異なるので一概には言えないのですが、つま先が減り易い傾向の靴は?
だから言ったのに。
ハーフソール併用仕様のメリットをご説明しましたが、それでもビンテージスチールのみで取り付けされる方はいらっしゃいます。ただその後にハーフソールを取り付ける事になるパターンがしばしばあります。
そういう場合は内心、「だから言ったのに・・」と。
今回もそのパターンです。ビンテージスチールのみで履かれてきましたがスチール交換でご来店されると、革底の中央が薄くなっていて指で押すとペコペコ・・。
今回ビンテージスチールを交換してもそれが摩耗し、そのランニングコストが回収できる前に革底に穴が空いてしまいそうです。そうなるとせっかく取り付けたビンテージスチールが無駄になってしまいます(その後オールソールするのであれば)
という事でこの段階まで靴底を摩耗させてからではありますが、ハーフソールスチール併用仕様にするということに。
この段階からでも今回は問題ないのですが、例えば底縫いが完全に擦り切れてしまっていた場合はお勧めできない、またはリスク込みでの補修となってしまいます。
リスクというのは底縫いが完全に擦り切れている状態(つま先以外)でハーフソールを取り付けても、底縫いが切れているのでその後にウェルトと革底の間で剥がれて(浮いてきて)しまう事があります。
ハーフソールを取り付けたのが原因という訳ではなく、底縫いが切れているので時間の経過とともにという感じです。
そうなると、その浮いた隙間から接着剤を塗布しても固定する事ができないので、その補修費用が無駄になってしまいます。
『完全に擦り切れている』ですが、ある程度の底縫いの糸が摩耗していても問題はありません。点々と糸の断面が途切れて見えてしまっている状態では上下の糸が全く絡んでいないので、その状態では剥がれてきてしまう可能性が高くなります。
なので後々ハーフソールを貼るのであれば、新品の段階で取り付けしてしまった方が革底も摩耗して薄くなっていないですし、糸切れによる革底の剥がれの心配もしなくて済みます。
また今回のように、ビンテージスチールのみを取り付けた状態から、ハーフソールスチール併用仕様に戻すには、ビンテージスチールを埋め込んだ部分を革で元の高さに戻す補修が必要になり、費用も1.000円程度追加でかかってしまいます。
- ハーフソールスチール併用仕様:6.500円
- 凹み埋め戻し補修:1.000円〜
- 合計補修費用:7.500円
革底にビンテージスチールを直接取り付ける場合は、革底にスチールの厚み分凹みを作る必要があります。なので底縫いが縫われている位置が浅い場合は、その凹み加工で底縫いの糸が切れてしまう事があります。
ただビンテージスチールはネジで固定するのでその部分の底縫いの糸が切れてしまっても問題はありません。一応当店ではなるべく底縫いの糸が切れないように凹みの調整はしてはいますが個体差によります。
時々ですがこのビンテージスチールをジェリービーンズやジェリーフィッシュスチールの取り付け方のように、加工せずそのまま革底に載せてネジで固定しているお店がありますが、それは誤った使い方になります。
ビンテージスチールは再交換できない?
以前お客様からの質問で「ビンテージスチールは同じネジ穴を使うので再交換することはできないと他の修理店で言われたのですが・・」と。
確かに革底にあいた同じ穴に再固定するのでそのままではネジの締まりが緩い事があります。
当店では再交換の際にはネジ穴は一度木釘で埋め戻してから再固定しているので、その点は特に問題はありません。
またビンテージスチールを取り外した画像でも確認できますが、ネジ穴の位置が底縫いに重なっている箇所がありますが、この部分というのは糸にネジを指している事になるので通常のネジの長さではあまり締まりが効いていません。
なのでその点も当店では通常のネジより長めのステンレスネジを使用し、なるべくそのような状態でも革の土台部分にネジが固定されるようにしています。
凹みの埋め戻し
埋め戻しには革底で使用する硬くて繊維の詰まった革を使用しています。
現状の靴底の厚みと同じになるように足した革を削り落とし、ハーフソールを取り付けるので靴底の表面を荒らします。この荒らしという加工は新品の状態でも行います。
「荒らす」というと、ときどきこれも質問されるのですが「削るのですか?」と。削るというよりは粗めの紙やすりで表面をザラザラに擦る、という感じでしょうか(実際はグラインダーで行いますが)
新品の靴底だと仕上げの塗装やワックスなど仕上げ剤がついているので、それを取り除かないと接着剤が付きません。
すでに履いた状態であれば路面の汚れやゴミなどが付着しているので、それを掃除する感じです。表面もツルツルの状態では接着剤の食いつきが悪いのでザラザラに毛羽立たせる必要があります。
ビンテージスチール取り付け
ハーフソールを取り付けたらビンテージスチールの凹みを加工します。革底に直接ビンテージスチールを取り付ける場合はその厚み分の革底を削る必要がありましたが、ハーフソール併用仕様の場合はハーフソールの厚みでビンテージスチールの厚みは相殺できます。
またつま先付近というのはウェルトの歪みやコルクの入り具合で、靴底面の膨らみが左右の靴でもまちまちなのでハーフソールの厚みでそれらの歪みを吸収するのにも役立ちます。
明るい革の色の層が今回埋め戻した革の部分、残ったハーフソールの厚み、ビンテージスチールという階層になっています。
ハーフソールは画像のモノグラムデザインがレギュラー仕様ですが、他のVIBRAMソールにも変更は可能です。ただハーフソールの厚みが2.0mm以上の素材を使用する場合は、前側(靴底側)が高くなり踵側(リフト)が低くなってしまい前後の高さのバランスが悪くなるので、合わせてリフト交換が必要になる場合があります。
以上、オールデンのあるある言いたい、というかハーフソールとビンテージスチールの取り付ける時期の善し悪しについてのご案内でした・・・。
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