ALDENのVIBRAMソール履き比べ?

補修前・ALDEN #961
目次

ダイナイトソール以外の選択肢

今回は2足のALDENをソール交換するにあたり、それぞれ異なるvibramソールを選択し履き比べてみるということに。

ビジネスの紳士靴でラバーソールだと、ブランドとしばしばコラボしているからか、知名度的にダイナイトソールを選ばれる方が多いですが、店主としては今回のvibram #700と#430のラバーソールが現状ではおすすめです。

ダイナイトソール
ダイナイトソール

ダイナイトソールが選択肢のトップではない理由としては、つま先が摩耗しやすいかと思います。全般的にソールのつま先は摩耗し易いのですが、ダイナイトソールの場合は凸部分に厚みを保たせているので、その分ベースのソールの厚みが若干薄めなのでウェルトまですぐに到達しがちです。

摩耗したダイナイトソールのつま先

また、蹴り出す際につま先の凸が支点となり、つま先により負荷が加わり摩耗してしまうのではないかと思います(これは想像の域ですが)

ダイナイトソール
凸部分が特徴的なダイナイトソール

今回のご依頼主の方はすでにvibram#2055(ダイナイトソール風)でもソール交換をされて履き比べを行われています。

ちなみに私もvibramソールを履き比べしていますが、#700・#430・#4014・#2021・#1136・#148・#2668 などを履いています。年齢とともに足腰に優しいクッション性の高い#2021などのスポンジ系のフラットソールを好むようになっています。

補修前・ALDEN #563

クラークスのソール交換特設ページでvibramソールの比較を少し行っていますのでご参考に覗いてみてください。

分解

ALDEN #961は以前つま先が摩耗したのでラバーにてつま先補修済みです。そして遂に革底に穴が空いた状態に。この靴はミッドソールが一枚挟んであったのでまだコルクは露出していません。

ALDEN #961
革底を剥がすとミッドソールが露出

ALDEN #563は革底に穴が空いてコルクが流出し始めていました。革底の交換目安時期は穴が開く直前です。穴が空いてしまうと隙間に充填されていたコルクが流出、その状態で歩行してしまうとコルクがなくなった空洞の部分で中底が陥没してひび割れてしまう場合があります。

劣化したコルク

中底とは実際に足が乗っている靴内部の底面です。中底がひび割れてしまうと履き心地も悪くなります。基本的に中底は交換することができません。ですので靴底に穴が開く寸前がベストなソール交換の目安時期となります。

靴底中央を指で押してペコペコしている状態が、革底が限界まで薄くなっている目安

穴からコルクが流出

ALDENのゴツめのシャンク。この金属のプレートで地面から浮いている土踏まずを支えています。

シャンク

シャンクはコルクの上に乗せてある状態なので履き込んでいくと、コルクが潰れて革底との間に隙間ができると定位置からシャンクが動き出してしまうことがあります。

最悪の場合だとシャンクが前側に動いてしまい、それを歩行の際に踏みつけてしまうことで、シャンクが徐々に革底を突き破り露出してしまったり、音鳴り(靴底から音が鳴る)が発生することもあります。

コルクは入れ直します

ですのでオリジナルのこの設置方法は不具合が生じる可能性があるので、当店では別の方法で行っています。まずシャンクに綿テープを巻き付け接着剤で固定できる状態にします(金属に直に接着剤を塗布では固定され難い)それを中底面に接着しコルクを隙間なく充填し埋め込んでいます。

日本メーカーだとウェルトの取り付けが正確なので、板状の金属シャンクの代わりに舌の形に似ている舌型と呼ばれる樹脂のシャンクを踏まずの隙間にピッタリに嵌め込んでいたりします。

そういえば以前、ソール交換のお見積りの際に「コルクの交換はいくらですか?」と尋ねられた事があります。えっ?と思いましたが、どうやらコルクの交換が別料金のお店があるようで驚きでした。

ところでVIBRAM #700と#430の違いは?

今回の記事ではvibramソールの履き比べ、がメインなのでソール交換過程の詳細は割愛します。

かかとのラバーリフトはどちらも革の積み上げとvibramサンライズリフトを使用。#700と#430用でそれぞれ同じデザインのブロックリフトもあるのですが、ヒールの高さが合わないので今回は使用できません。ですのでvibramサンライズリフト10mmと革の積み上げで高さを調節して製作しました。

#430(奥)と#700(手前)

#700、#430どちらもワークブーツなどでよく用いられるオイルレジスタンス(耐油)のラバーソールです。オイルレジスタンスとは油でも滑り難いという意味ではなく、油でも劣化しにくいソールという意味です。

油まみれの環境で履くことは少ないかもしれませんが、そういう滑り易い環境に適しているからか、私が履いている感想としては雨の日でも滑り難く(私の雨の日用の靴は#430を装着しています)素材的にもvibramラバーソールの中でも摩耗し難い部類に入ると思います(ダイナイトソールより確実に摩耗し難い)

#430はソール中央部分が2.0mmぐらいレリーフ状に盛り上がっています。

vibram#430

#700ソールはV字状に薄いレリーフが施されています。

vibram#700

雨の日に滑るかどうかは、表面のパターンもある程度影響しているかと思いますが、ラバー自体が滑り難い素材かどうかが重要なのではないかと思います。(vibram1136や#148までいくと、物理的な凹凸が効果的ですが今回のソールとはジャンルが違います)

どちらのソールも一般的なラバーソールより気持ち厚めのソールです。#961はもともとミッドソールが追加されてボリュームがあったので#700で厚み的には丁度いい収まりです。

一般的なラバーソールや革底は5.0mm厚程度。#430はフラットな部分が6.0mmで凸の部分で7.0mmぐらい。#700は7.0mmとなっています。

vibram#430
vibram#700

靴底のパターンは履いて仕舞えば外観からは分からないのでビジネスシーンでも問題ないかと思います。

vibram#430装着
vibram#700装着

履き比べといっても今回はどちらも恐らく同じ履き心地だと思います。スペック的にもほぼ同じなので、店頭でのご相談の際もそのようにお伝えしましたが、どうせなら別々にして比べてみる、ということでした。

ラバーソールかレザーソールで悩んだ時は?

ラバーソールは履いていくと、その先は再びオールソールしかありません。途中でつま先の部分補修はあるかと思いますが。

レザーソールもそのままでは同じ結末なのですが、例えばオールソールのタイミングで(または新品時)ハーフソールスチール併用仕様にすることで、それぞれ摩耗した段階でハーフソールとスチールを定期的に交換し続ければ基本的にその後のオールソールの必要はありません。

ソール交換時にラバーソールとレザーソール、それぞれ選ばれる方の傾向としては、

ラバーソールを選択される方

  • 今回のソール交換で履き潰すので
  • 雨の日用として
  • そこまで頻繁には履かないので

革底でハーフソールスチール併用仕様される方

  • 気に入った靴なので末長く履きたい
  • ランニングコストを抑えたい(オールソール回避)
  • 思ったより早く靴底が摩耗したので補強したい

という感じです。ラバーソールでも表面に凹凸のないソールであれば、ハーフソールを取り付けることは可能です。ヴィンテージスチールについてはラバーソールにはネジが効かないので取り付け不可となります。

紳士靴でビジネス系の靴でも使用できるvibramのラバーソールってあまり種類がないので、ダイナイトソールになりがちですが、ワークブーツでは定番の#700や#430をタフなビジネスシーンに合わせるのもありなんじゃないかと思います。

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