数年経っても靴底が減らないCrockett&Jones ハーフソール&スチール交換編

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補修前
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初回のリフト交換で。

数年前に当店でオールソールを行なったCrockett&Jones。アッパーの小指部分に多少クラックが入り始めていますが綺麗に履かれています。この靴はオールソールの際にハーフソールスチール併用仕様で仕上げてあります。

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補修前

リフトも革付きのリフトではなく耐久性に優れたvibram社のラバーリフト仕様に。当店では基本的に革底でのオールソールの際はオプションでハーフソールスチール併用仕様をオススメしています。オールソール費用プラス6.500円追加で掛かってしまいますが、その投資分は十分回収できますしそれ以上のランニングコストがお約束できます。

ときどきリフト交換で持ち込まれる革底の靴で、初回のリフト交換ですでに革底に穴が開き始めている、もしくは薄くなってペコペコの靴があります。リフトを一度も交換していないのに、すでにオールソールが必要な状態に。これって物凄くランニングコストが悪いやつです。

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リフトはちょうど交換のタイミング

履かれる頻度や使用環境や履く人の体格でも違いますが革底のまま履いている場合、リフト交換を数回繰り返し、それでようやく革底に穴が開き始めてオールソールというのが一般的な頻度かと思います。

リフト交換初回で革底に穴が開き始めている靴というのは、その人の歩き方に起因するのか、それとも革底の質の問題なのか(有名ブランドの革靴だったりするので下手な革底は使っていないとは思うのですが)原因は分かりません。

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もしくは初回のリフト交換で持ち込まれた靴で革底はまだそこまででなくても、つま先ががっつり摩耗しウェルトまで擦り減り始めている場合も多々あります。ウェルテッド製法の場合はウェルトまで摩耗させてしまうとそのままではオールソールができない場合があります。

追加でウェルト交換までなってしまうとオールソール費用プラス10.000円〜程度かかってしまうので、それは恐ろしくランニングコストが悪いです。

ランニングコスト最強説

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これはタイミングが遅いです

つま先のビンテージスチールがかなり摩耗しています。金属でもこのぐらい摩耗してしまうので革底のままであればひとたまりもありません。

もう少し早い段階が交換時期の目安ではありますが、革での部分補修が必要になりますがこの状態からでもビンテージスチールの交換は問題ありません。(余計に費用がかかるので革底まで摩耗する前にスチールの交換を!)

今回はハーフソールも摩耗しているので同時にハーフソールとスチールの交換になります。これらの交換スケジュールについて詳しくはこちら

ハーフソール&スチール交換スケジュール

スチールのネジ頭が摩耗していてドライバーでは回せないネジは削って外します。

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摩耗したハーフソールを剥がします。もちろん隠れていた革底は私が数年前に取り付けたままの状態で摩耗せず当時の状態を保っています。当たり前ですがハーフソールを取り付けているので底縫いの糸も擦り切れていません。

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前回のオールソールでハーフソールもビンテージスチールも取り付けず、革底のまま履かれていたら恐らくつま先はウェルトまで削れてしまっていたでしょうし、底縫いの糸も擦り切れていたと思います。そして、もしかしたらまたオールソールになっていたかもしれません。

そう考えるとオプションのハーフソールスチール併用仕様/6.500円でオールソール1回分をすでに浮かせたことになりますし、今後も引き続きオールソールの必要もありませんので6.500円の投資というのはランニングコスト的に良いのではないかと思います。

ちなみにウェルテッド製法のオールソールというのは、ウェルトを交換せずにそう何度も行えるものではないですし、Crockett&Jonesの場合はウェルトの仕様にそもそもちょっと問題があるので、できればオールソールを回避できるハーフソールスチール併用仕様を新品の段階で取り付けるのがオススメです。

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ハーフソールとリフトを剥がした状態

ハーフソールがあれば底縫いの糸が擦り切れることはないので基本的にその後のオールソールの必要はありません。また革底からの雨の浸透も予防できるので路面の汚れた雨水の吸い上げによる、ソールとの境目のアッパーへの雨シミ予防にもなります。

ハーフソール取り付けのメリット

  • 底縫いが擦り切れない(土台の革底が摩耗しない)
  • 取り付け後は基本的にオールソールの必要がない
  • 雨シミ予防
  • 不意な滑りで腰を痛めない

ハーフソールスチール併用仕様最強説

ビンテージスチールはネジで固定するので交換し再度固定する際には、ネジ穴が広がっているので固定できなくなるのでは?という質問がありましたので一応補足を。当店ではネジ穴をその都度、木釘で埋めているので再固定には問題はありませんのでご安心を。

ビンテージスチール
木釘で穴埋め

革底とリフトは古い接着剤を削り落とし綺麗にして、新しいハーフソールとリフトを取り付けていきます。

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レギュラーのモノグラムソール

上画像、vibramモノグラム柄がレギュラーソールですが他の柄のソールでもご対応は可能です(別料金)。下画像はvibramエクスプローションソールの事例。

vibram
vibramエクスプローションソール

取り付けて周囲を荒立ちしたら次にビンテージスチールが収まる凹みを加工します。

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ステンレスのネジで固定していきます。ドイツ製のビンテージスチールですがドイツって正確な工業製品てイメージがありますが、ビンテージスチールに関してはそうでもありません。

ネジ穴に誤差があってそのままではネジが通らなかったり収まりが悪かったりとまちまちなので、毎回ネジ穴をドリルで加工し使用しています。

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ビンテージスチールも都合よくその靴のつま先の形状にぴったり!なんてものはないので、はみ出た部分はグラインダーで削り落とします。今回のようなつま先がスクエア系の場合は、ビンテージスチールのサイドがはみ出しがちです。

ビンテージスチール

コバをグラインダーで削り、紙やすりでシュコシュコ整え、表面をインクで染めたら完成です。

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これでまたしばらくこの靴とは疎遠にはなります。靴底はしばらく放っておいても心配ありませんが、アッパーの小指に入っているクラックがこれ以上状態が悪化しないように、定期的に保湿メンテして頂ければ宜しいかと思います。

靴クリーム三種盛り

革のお手入れについてですが、「塗ったら光る!簡単お手入れ」みたいなシューケア商品がありますが、あれは使わない方が良いかと思います。表面を強制的に光らせる溶剤が入っているので、光るかもしれませんが使い続けると塗膜がひび割れたりします(商品の成分表を確認してみてください)

日常のお手入れにはサフィール社の乳化性のクリームやユニバーサルレザーローションが扱いやすいと思います。レザーローションで保湿を行い、革と同系色の乳化性のクリームを使用することで補色と艶出しが行えます。使う順番は、レザーローション→乳化性のクリーム→(油性ワックス)という順番です。

靴クリーム基本の三種

  • 保湿クリーム(保湿と栄養重視のクリーム)
  • 乳化性のクリーム(保湿と補色効果があり艶を与えるクリーム)
  • 油性ワックス(つま先を鏡面にしたい場合は必要)

ときどき乾燥してひび割れている靴のオーナーの方にお手入れされていますか?と聞くと、していますと。お話を伺ってみると油性ワックスだけ使っているとのこと。油性ワックスは基本的に保湿も栄養分も添加されていません。

なのでワックスをいくら塗っても革は保湿されませんし栄養も与えられませんのでご注意ください。逆にワックスを靴全体に塗ってしまうと屈曲部分では塗膜が割れて革の表面がうろこ状にひび割れてきてしまいます。

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補修後

ちなみにハーフソールスチール併用仕様というのは当店だけで呼んでいる呼称ですので他店で

『ハーフソールスチール併用仕様で!』

と言っても、ぽかんとされてしまいますのでお気をつけを・・・。

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