TUMIのバリスティックナイロンが定番でよく裂ける場所

ストラップ金具の付け根がよく裂ける
目次

定番で裂けてしまう

ストラップで矢印方向に引っ張られる

ストラップを引っ掛ける金具のレザーパーツの脇が定番で裂けてしまうようです。裂けるのは決まって片側。考えられる理由は赤矢印方向にストラップで常時引っ張られる事でバリスティックナイロンが耐えきれずに裂けてしまうのだろうと。

レザーパーツを外した状態

バリスティックナイロンは強度が高いので防弾チョッキにも使用されている、という話もありますが、それは第二次世界対戦中のパイロットが対空砲火で破壊された機体の金属片などから、身を守る為のジャケットに使用されていたという話に尾鰭が付いたようです。

実際には一点に威力が集中するような拳銃やライフルの銃弾を防ぐことはできません。現代ではバリスティックナイロンより遥かに強いケプラー繊維が防弾チョッキに使用され、それについては実際に銃弾を受け止めることができるようです。

銃弾は防げませんが、それでも一般的なナイロン生地に比べ、引き裂き強度が優れたバリスティックナイロンがなぜどれも同じ場所が同じ様に裂けてしまうのか?

バリスティックナイロンとの引裂き強度差

・一般的なナイロン(衣類やバック用)より約5から7倍強い
・コーデュラナイロンは、ほぼ同等

裂けてしまう原因は?

素材の加工

TUMIのバリスティックナイロンは裏面に伸び止め加工の処理がされているものと、されていないものがあるようです(比較的昔のモデルは処理がされているような気がします)

伸び止め加工がされていない場合、編み込まれたナイロン糸は1箇所がほつれ始めると簡単にほつれが拡大してしまいます。下の画像は裂けてボサボサにほつれた繊維はカットし除いた状態。黄色の点線が付け根パーツが縫製されていた部分。画像ではわかりにくいのですが、赤矢印部分まで糸が縦に抜けてしまっています。

ほつれが拡大しやすい

下の画像はTUMIの別のモデル。こちらのモデルは金具が固定されている部分は根本が革で覆われ本体のバリスティックナイロンに縫製されています。

こちらはTUMIの壊れ難い別モデル

TUMIの別仕様モデル

この仕様のモデルは引っ張られる付け根部分が、革の土台と一緒に本体のバリスティックナイロンに縫製されているので、引っ張られて部分的に裂けるという補修はほとんどありませんが、その代わり金具を連結している革のベルト部分で裂けてしまうという補修はしばしばあります(これは経年劣化なので致し方ないかと)

壊れ難い補修方法

革の土台

まずは縫い付ける土台部分を革で補強します。革で覆う範囲は裂けていた部分はもちろんですが、糸が抜けていた部分も心配なのでその範囲まで覆います(状態により覆う範囲はまちまちとなります)

縫い付ける革には下穴を事前に開けています。完成している鞄に後付けで革を縫製する際には、八方へ自由に縫い進められる八方ミシンといえども縫製方向に制限があります。

また鞄も重いのでミシンの送り機能だけでは縫い目のピッチが狂いがちです。なので事前に下穴を開けておいてから本体にセットすることで、その穴を拾っていけばピッチも狂わず綺麗に縫えます。

土台の補強が終わればあとはオリジナルの金具固定パーツを縫製します。これでストラップで引っ張られても本体の表面のバリスティックナイロンのみが局所的に引っ張られることがなく、面で耐えられるようになります。

完成

内装生地、バリスティックナイロン、革の土台、金具固定パーツをまとめて貫通し縫製しているので厚みがあり縫製は難しくなりますが、強度MAXです。

内装側にも縫い目がでます

ストラップに引っ張られる際は表面のバリスティックナイロンのみではなく、本体ごと引っ張られることになるのでバリスティックナイロンが裂ける心配はありません。

角の裂けも補修できます

側面ではなく正面、背面の対角線に付け根パーツが付いている場合の裂けも補修できます。こちらもやはり片側のみ裂けていました。

裂けていない側・正面

同じように付け根パーツが縫い付けられていた表面のバリスティックナイロンが、引っ張りに耐えきれず裂けてしまっているようです。右方向に引っ張られその後方が耐えきれず・・・。

裂けている側・背面

裂けてしまうと編まれていたナイロンがボサボサとどんどん拡大・・・。バリスティックナイロンは裏面に伸び止め加工が施されていないと一旦裂け始めてしまうと広がり易いのかもしれません。

裂け目が広がり難いナイロン生地としてはリップストップナイロンという生地があります。生地のベースとなる細い糸の間に、太い糸を格子状(チェック柄)に織り込んでいます。

一部がほつれても格子がほつれをブロックし(区画分けされているイメージ)、それ以上裂け目が広がり難い構造となっています。この生地はアウトドア用のテントやバックパック、ウェアなどによく使用されています。

リップストップ誕生の歴史

第二次世界大戦中、アメリカ軍がパラシュートの強化を目的に開発。当時、パラシュートが空中で少しでも裂けると、風圧で一気に破れが広がって大事故につながるリスクがあり、それを防ぐために考案されたのがこの織り方。

TUMIはバリスティックナイロン

リップストップは薄くて軽量で丈夫ですが、ビジネスシーンで利用するような鞄には生地感がカジュアル気味になってしまうので、ビジネスバックに使われているところはあまり見かけません。

正面側の裂け補修

ボサボサをカットしました。ちらっと補強のナイロンが見えています。このモデルも付け根パーツの四角い縫製箇所の補強はしてありますが、外装のバリスティックナイロンが引っ張られる負荷の補強にはこれではなっていません。

チラッと見える縫い目の補強ナイロン

このモデルは角の丸みがある形状からほつれているので先ほどの側面の直線的な補修と同じ方法では上手くいきません。

まずはほつれが始まっているエッジ部分を帯革で処置します。縫いたい部分のキワの谷の内装側は、内装生地とバリスティックナイロンなどをまとめたパイピングがあり、ミシンで縫製するとパイピングが邪魔をして縫い目がぐだぐだになりそうなので手縫いでちくちくします。

エッジ部分を帯革で縫製したら内側に倒します。それから先ほど同様に付け根パーツを縫製する箇所を革で補強します。

土台の革を縫製

ぐるっと一周、本体に土台の革を縫製します。これで付け根パーツが引っ張られても鞄本体自体に縫い付けられいるので強度MAX。

土台の革
付け根パーツ縫製

角裂け補修の完成

どうでしょうか、なるべく後付け感が出ないように仕上げたつもりですが。

ナイロン鞄の場合は形状が不安定で鞄本体の左右での寸法もまちまちなので、ある程度は革パーツの形状主導で形や位置決めていかないと作業が進みません。

初めにキワの補修を行なった理由が分かり難いと思いますが、完成時には見えないのですが、こんな感じでキワのボサボサをあの工程で内側に収めています。

キワの収まり

一つ目の事例の側面の裂け補修では、直線なので土台の革パーツでキワの収めもまとめて一工程でできるのですが、角のカーブの場合は別パーツにしないと皺がよってしまい仕上がりが悪くなってしまいます。

内装も貫通して縫製

使用者が異なるのに同じ部位が同じように壊れる場合、それは構造的な問題があるのだと思います。伸び止め加工の有無、縫製の仕方、補強の入れ方などなど。そういう場合は元のオリジナルの見栄えにこだわって治したところでまた同じように壊れてしまいます。

当店のTUMI補修ランキング1位の現行モデルのハンドルも同じくですが。現行モデルのハンドルも芯材に構造的な問題があります。

TUMI・補修ランキング1位

ただ耐久性ばかりを考えて治すとゴツくなり過ぎて見栄えが悪くなったりするので、ちょうど良い塩梅を探しながら両方がバランス良く仕上がるようにと日々治しています。

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