TUMIのリュックの裂け補修

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ストラップ付け根の裂け
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そうなるだろうという縫製

TUMIの定番のブリーフケースは縫製や構造はしっかりしているのですが、リュックについては使われている素材であったり縫製がちょっとどうなのだろうか?ということがちょくちょくあります。素材ついては後半で触れたいと思います。

今回の依頼品もそれではそうなるだろうな、という縫製の仕方でした。ストラップが縫製されている部分の縫い目が負荷に負けてナイロン生地が裂けて縫い目がほつれてしまっています。

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すでにストラップと連結されていた部分のナイロンベルトは紛失していましたので、代わりにはいつもTUMIの持ち手の仕様変更で使用するナイロンベルトと同じ素材で幅が25mm規格のものを使用します。

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こちらは壊れていない反対側の付け根

元のようにナイロンベルトを差し込んで縫製しても縫製箇所のナイロン生地は裂け始めているので縫製箇所は革で補強します。

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元々の縫製方法は表面の薄いナイロン生地のみに付け根が縫製されていました。なのでこの部分の裏面には縫い目が出ていません。

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付け根の裏面

裏生地も伸縮性のあるメッシュ素材なので若干頼りないのですが、それでも他の部分と同じようにもともと貫通して縫製しておけばまだましだったのではないかと思います。なぜ他の部分は貫通して縫製しているのに、負荷の掛かりそうな付け根は表生地のみに縫い付けているのだろうか・・。

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他の部分は裏地も貫通して縫製されている

こんな感じで革とナイロン生地をまとめて縫製します。硬い革を一緒に縫製することで縫い目に負荷が掛かってもそこから裂け難くなります。鞄などでも負荷の掛かる持ち手の付け根やストラップの付け根の本体側には裏面に補強材が貼られ縫製箇所を補強してあったりします。

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革で補強補修
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裏地も一緒に縫製

善し悪しは見えない部分に

製品の外観からではそのような補強は窺うことはできないのですが、内装交換で分解するような事があると、そういった見えない部分の手の掛け方でそのブランドの善し悪しが分かったりします。そして使われている素材や補強の入れ方などオリジナルの工夫があると勉強にもなります。

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今回のご依頼主の方はリュックのストラップを片側のみで背負おう事があるということでしたので、それも今回の裂けには少なからず影響していると思います。リュックを片側だけ背負うとその荷物の重さの全てが付け根の縫製箇所に集中するような構造なので持ち方には注意が必要です。

使われている素材を確認してみる。

製品を購入するときにその製品に使われている素材というのはあまり細かく確認されていないと思います。革か合皮ぐらいは確認しているかもしれませんが、他にどんな素材が使われているのか。

例えばTUMIのリュックで『ナヴィゲーション』という製品があります。

TUMIのHPに記載のこの製品に使われている素材の表記には

主素材リサイクルバリスティックナイロン/ポリエステル/PU/牛革、と記載があります。
(amazonなどのショッピングサイトでは素材表記がナイロンのみしかなかったりします)

他の素材は分かりますが、PU(ポリウレタン)とは?

ポリウレタンとは?

ポリウレタンとは天然ゴムの代替え品として第一次世界大戦中に開発された素材で優れた長所がたくさんありますが、その短所としては空気中の窒素や紫外線や熱などから影響を受けると、徐々に分解され必ず劣化してしまいます。スニーカーのソールの加水分解も同じ現象です。

ポリウレタンは使っても使わなくても通常2から3年で劣化するのが目安となっています。使わずにクローゼットにしまって置いたりすると、高音多湿の環境下では劣化の進行が早まるのでポリウレタンが使われている製品についてはどんどん使い倒して元を取った方が良いと思います。

ポリウレタンがこのリュックのどこに使われているのかは分かりませんが、恐らく黒い革のように見える箇所のいずれかに使われているのだろうと思います。

例えば上部の握るハンドルの箇所であればそっくり交換できる可能性がありますが、本体に組み込まれているような箇所だとその箇所を交換というのは厳しいので、表面を革で覆うような補修で誤魔化すしかないかと思います。

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肩当て合皮面

TUMIの場合は定番のブリーフケースに付属しているショルダーストラップの肩当ての裏面にも、PU素材なのか合皮素材が使われていて劣化して黒いカスが洋服に付着することで有名ですが、他の製品でも購入の際には使用されている素材を細かくチェックされた方が宜しいかと思います。

ストラップの肩当てについては合皮面を革に交換する補修は可能ですので(一部不可のモデルもあります)お問い合わせください。

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