スパニッシュチェアの背面ベルトの裂け補修 継いで治す篇

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背面パーツはすべて繫がっている。

座面のベルトはベルトが別パーツになっているので縫製を解いて分離できるのですが、背面のパーツは柱に通す二箇所の輪っかも固定するベルトもすべて背もたれ部分と革が繫がっています。なのでその途中で裂けてしまうとどうしたものかと。

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裂ける部分は座面のベルトと同じように美錠を固定する穴の部分。座面ベルトは両面合わせで革が二重になっていますが、背面ベルトは背もたれ以外の折り返したところから一枚仕立てになっています。なので強度的にはそもそも座面ベルトよりは劣っています。確かに座面ベルトよりは負荷が掛からないとは思いますが、それでも椅子の値段が値段なのでそこはケチらずに折角なら座面ベルトと同じように二重にすれば良いのにとも思います。

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市販の接着剤を使われて革の断面が黒く硬化しています

ときどき革が裂けた部分を瞬間接着剤など市販品で固定されようとしている方がいらっしゃいますが、裂けるぐらい負荷が掛かっている箇所なので接着で再固定しようとするのは無茶です。そしてリペアDIYされる方の多くは、はみ出した接着剤を慌てて指で拭き取ってその指で他の関係ない部分を触って・・・と接着剤まみれで混乱状態の品物も見受けられます。

それと修理店でも靴や鞄などの裂けた箇所を接着剤のみで処置してしまうお店もあるようですが、新しく縫い目もできずその瞬間は見栄えは良さそうに見えますが、結果は先述の通りなのでそういうお店は注意された方が良いと思います。

背面ベルトの補修方法ですが負荷が掛かってよく裂けてしまう美錠の固定穴のところで継ぐことはできないので、手前の部分から繋いで補修することになります。箇所については革の状態により個体差があります。

こちらの品だと端から三個目の穴で裂けています。革の状態はそこまで乾燥しておらずコンディションは悪くはないようですが裂けてしまっています。画像を見てもらうと分かりますがベルトの始まり部分、折り返しが始まる少し手前までは革が二重なのですがベルトの部分になると革が一枚だけになっています。テンションがかかるベルト部分はやはり座面のベルトのように革を両面合わせた仕様の方が安心だと思います。

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革は天然素材なので部分部分で繊維の状態もマチマチですし、100cm以上大きく一枚で使うとなると隅々までベストな状態というのは難しいと思うので、革を両面合わせた仕様の方が質の悪い部分があった時の保険にもなります。

こちらのベルトは端から二番目のベルトで裂けています。他の穴で使われていた形跡がないのでこの穴だけで使われてきて裂けてしまった感じでしょうか。革は若干乾燥気味なのでそれが影響していると思います。

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継ぐ場所は折り返された部分から穴の手前までの革の状態が良さそうな部位で継ぐことになります。今回は椅子の柱に通して隠れるあたりから継ぐことに。

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革を継ぐ

継ぐ部分は合わさり目の段差がなく継ながるように、本体側と継ぎ足すベルト側で互い違いに革を漉いておきます。革を漉く場合は通常は床面(革の裏面)を漉くのですが、今回は裏面にも補強で革を貼り合わせるので自然に継ながるように両面を少しずつ漉いています。

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裏面にも革を貼り合わせてベルトの強度を高めておきますが、座面ベルトのように厚いヌメ革を二枚合わせてしまうとそうでない部分との厚みの差が極端に出てしまい、その境目が今度は弱くなってしまうので適度な厚みを裏面に貼り合わせます。

下画像で断面が濃い部分がオリジナルでそれが右側の革で両面から挟み込まれているのが分かると思います。下側が今回新たに追加した補強で貼り合わせたヌメ革です。貼り合わせのヌメ革も斜めに漉いているので両面とも境目には段差はできません。

パーツが全て継ながっているのでその端のベルトを縫うのは本体がぶらんぶらんして縫いずらいです。

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手縫い風景

背面ベルト接続完了。

維ぎ合わせる本体側の革のエイジング具合により補修の革と初めから色が合う場合もあれば、もう少し年数を経過して革が焼けないと馴染まない場合もあります。

ヌメ革なのでそこは致し方無いかと。画像の場合は柱で隠れて色が焼けていない部分とはあまり濃さが変わらず同じような色だったので継ぎめの色の差異は無いかと思いますが、常に陽に当たっていた革の部分は色が焼けて黄褐色にエイジングしているので若干色が異なっています。

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ヌメ革製品の場合は部分部分でエイジングの経過が異なるのでなかなか初めからバッチリと色が合うというのは難しいですが、色というかこれはヌメ革特有の経年変化なので気長に育てていただければ次第に色は馴染んでいくかと思います。

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継いだヌメ革も少しオイルを塗布して周りの焼けた色に合うように色味を落としていますが、あとは日々のエイジングで馴染み待ちという感じです。

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これは裏面に補強で追加して貼り合わせたヌメ革。裏面に使用したヌメ革は厚みの関係で表面とは違うヌメ革を使用しています。このヌメ革は色がほとんど焼けていないのではじめ明るめですが(ヌメ革は紙にくるんで暗所に保管していても徐々に色が濃くなります)、この面は椅子で隠れるので明るくても大丈夫かと思います、それにこちらも追々に色は濃くなっていきますので。

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