洗濯はNGです
この鞄の特徴として折りたためて軽いという点があります。なので作りが非常にシンプルで通常の鞄で行われているような補強などはあまりされていません。本体はナイロンの薄い生地に裏面にビニールコーティングを施し、そのままではテロテロしてしまうナイロン生地に張りを持たせています。
革の持ち手は一枚の革を二つ折りにして縫製し、付け根部分は本体のナイロン生地に直接縫い付けられています。一般的な内装がついている鞄であれば、表地の裏に補強材が貼り合わされ持ち手の付け根が縫製されています。
持ち手の付け根というのは鞄の中で一番負荷がかかる部分なので、大抵は内部で補強されているか、または本体の生地自体がしっかりしているかです。
ロンシャンの場合は裏面にコーティングされているとはいえ、それはあくまでもコーティングなので補強としての効果はありません。ということは薄いナイロン生地に直接持ち手を縫い付けている状態なので、その部分の縫い目に負荷が掛かり過ぎるとまずコーティングが割れてきます。
そして徐々に縫い目の糸でナイロン生地を裂いていってしまいます。一般的に鞄の縫製で使用される糸はポリエステル系の非常に強度の高い糸を用いているので、細い糸でも手で引っ張って切ろうとすると糸は切れずに皮膚に食い込んで切れそうになります。
またナイロン生地が汚れたからといって洗濯してしまう方もいらっしゃいます。洗濯してしまうとコーティングとナイロン生地の間に水が侵入してどんどん剥離させてしまうようです。(経年劣化でも剥離はしていきます)
そして革の部分も一緒に濡らしてしまうと、革の色が少し乳白色にぼやけてしまったり、持ち手付け根の革が伸びてしまったりしてしまいます。そして最悪は革の色が染み出して周囲のナイロン生地を変色させてしまう場合もあるようです。
付け根の補強方法
裏面のコーティングがひび割れている程度であれば問題ありませんが、表のナイロン生地の縫い目ですでに裂け始めてしまっていると、補強を行ってもその後に裂け目が広がってしまう可能性があるので、補強は早めに行ったほうが良いです。
補強は裏面に革を宛てて付け根部分にもとある縫い目に重ねて縫製することで、それ以上ナイロン生地に縫い目が食い込み過ぎないようにします。
これは縫い目をナイロン生地に食い込み難くする補修なので、すでにひび割れている裏面のコーティングを治す補修ではありません。ただ補強の革を当てる際に革で覆われる部分については革と接着し固定します。
縫製の際はオリジナルの糸より少し細めの糸を用います。元と同じ太さの糸で重ねて縫製してしまうと、縫い目のボリュームが出てしまいやたらと目立ってしまいますので。ですが先ほど言ったように細い糸でも強度は十分なので問題はありません。
付け根の横に縫われている縫い目部分を補強をすればいいのでその部分は二重に縫製、その他は一周縫製しています。表面の縫い目の写真を撮り忘れましたが縫製を行っても見栄えは変わりません。以前お客様に「本当に縫製したのか?」と疑われたぐらい。
付け根が痛みやすい人の持ち方
付け根部分は補修前は糸がたるんで見えていましたが、補強して重ねて縫製することで本体に引き付けられ隙間から糸が見えなくなっています。
この補強はあまり荷物を入れない鞄や小さな鞄には必要ないのかもしれませんが、荷物が重い方や、裏面の付け根のコーティングがひび割れている場合は早めに補強を行ったほうがベターです。
この部分が痛みやすい持ち方としては片側の持ち手だけを持ち、または肩に掛け、鞄を開けて荷物を探したり出し入れしている持ち方です。
そのような持ち方だと片側の持ち手の付け根の縫製に、全ての荷物の重さが掛かってしまいナイロン生地に縫い目がどんどん食い込んで痛みやすいかと思います。それとその状態でファスナーを開閉するとファスナーも壊れやすいので注意が必要です。