ローファーのありがちな展開。

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いつものサイズ感では・・・

ローファー購入の際にありがちな、大きめのサイズを購入してしまう、という展開についてご紹介です。

ローファーは紐靴などと違う設計ということを理解していないと、試着時の「丁度いい」という感覚で選ぶと間違いを犯してしまいます(特にしっかり作られた紳士靴の場合)

試着の際にやや窮屈な感じだったのでワンサイズアップで購入。販売ショップスタッフもサイズアップで大丈夫、というアドバイスもあり。

しかし「大丈夫だろうか・・・」と迷いのあるまま、とりあえずいつもの靴底補強(ハーフソールスチール併用仕様)をしようかと、当店にご来店の際に迷っていたサイズ感についてご相談を受けました。

窮屈でもないし現状では問題ないけど、どうなんでしょうかと。

そもそも窮屈

ローファーという靴種の構造は、紐靴より甲の部分がそもそも窮屈に作られています。理由は足を押さえる(固定する)部分が紐靴と違い、わずかに競り上がっている甲の部分しかないからです。

ローファーのサイズ
履き口が広い

その僅かな固定範囲で抑えるには、そもそも靴型の設計を窮屈(甲を低く設定)にしておかないと脱げてしまいます。(構わず紐靴の靴型で作ってしまっているメーカーもあるようですが)

履き口の高さも、足がそのままスッと入るように甲に向かって低く作られています。下画像の紐靴と見比べると違いが分かると思います。足が入れ易いということは、脱げ易いということでもあります。

ローファーのサイズ
履き口(トップライン)が低い

それなので踵を抜け難くする為に、アキレス腱あたりが通常より絞ってある靴もあります。絞ってあるので足の形状が合わないと、この部分で靴擦れしやすいです。

踵がキュッと絞られている

履き口はイタリアンテープと呼ばれる仕様で、革を内側で一旦縫製し外側へ折り返しているデザインがよく見られます。

使われている革が硬い場合はこの縁の部分がコリッと固くなるので、これまた靴擦れが生じ易いです(くるぶしの高さが合わないとここで擦れがち)

ローファーサイズ
イタリアンテープの縁

じゃあどうすれば?

では購入する際にはどういうサイズ感で選べばいいのか?

まずは靴の縦方向(足長)の長さが合っている、というのが前提です。ローファーに限らずですが、そもそも靴の縦の長さが合っていない方が多いです。ローファーで縦の長さが緩い場合は致命的です。

ローファーサイズ
ハーフソールスチール併用仕様を行います

縦に長ければ窮屈かどうか以前に、靴の中で足が前後に動いてしまうので論外です。

基本的なことになりますが、足を靴に入れたら靴の踵にピッタリと合わせ、足の幅が一番広い位置と靴の広い位置が合っているかどうかを確認します。

その上でですが、試着の際に甲の部分の締め付けがやや窮屈だな、と思うぐらいのサイズ感がいいかと思います。

窮屈でいい理由は?

ちなみにサイズ感とは関係なく、甲のベルトが左右で焼豚のようにぐるぐると縫製されているこの部分は、非常に固くなっています。

この部分は履いていても馴染んだり伸びたりはしません。骨格や血管の位置によってはこの部分が当たって痛む方が稀にいますが、これはサイズ感とは関係なくどうにもできません。

この部分は硬い

アッパー(本体の革)は履き込んでいるうちに伸びてきますし、中底(足が乗っている部分)も沈んでいきます(靴の内部が広がる)。ウェルテッド製法の場合は内部にコルクが入っているので尚更沈みます。

初めにどこも締め付けられず、丁度いいと感じるサイズ感で購入してしまうと、靴が馴染んできた時に必ず緩くなってしまいます。緩くなれば歩行の度に靴の中で足が前側にずれ、踵がパカパカになってしまいます。

紐靴であればその時点で紐をより絞めればいいのですが、ローファーは何もできません。ですのでそもそも窮屈という上に、馴染んだ(伸びた)頃を見越したサイズ感で購入しないと、あとでかかとパカパカ現象が発生してしまいます。

窮屈な設定という事と、革の伸びや沈み込み分を考慮する

ちなみにサイズが合っていても履き始めは革底に返り癖がついていないので、それによって踵が付いてこない場合もあります。

すでに間違えて購入している場合の対処法

サイズが大きい場合、殆どの方はまず始めに全体にインソールを入れると思います。全体にインソールを入れるとその厚み分、踵側も上昇するので履き口が浅くなりかえって脱げ易くなる場合もあります。

そして全体に入れるインソールだと甲をタイトにしたいのに指周りまで窮屈になってしまいます。

ですのでその場合は、甲の部分のみをタイトにするタンパットを利用されると良いと思います。

サイズ調整タンパッド

これを甲の裏に貼り付けると、その厚み分が窮屈になるので足が前にズレにくくなります。踵側に貼るものもありますが効果はタンパッドに比べると薄いかと思います。

紐靴で羽が閉じ切ってしまうような場合も、指周りのサイズに問題がなければインソールではなくタンパッドを取り付けることで羽が開くので、その分締め付けることが可能になります。

かかと擦り切れ防止パッド

ちなみに踵に貼るパッドはサイズ調整の用途というよりも、いつも踵の内側が擦り切れてしまう場合に予防処置として貼るという使い方でご案内することがあります。

定番で靴の内側が擦り切れる場合、その都度、革を当てて補修するのも費用がバカにならないですし、何度も行うような補修方法でもないので、擦れるのが分かっているのであれば、あらかじめこのような商品で保護しておくと良いかと思います。

で、返品交換してワンサイズ下げる

返品交換(サイズダウン)されて、ハーフソールスチール併用仕様を施しました。

ハーフソールスチール併用
ハーフソールスチール併用仕様

販売ショップスタッフもその人の経験での話になるので、それにより顧客へのアドバイスがワンサイズアップなのか、ダウンなのか偏るかと思います。(稀に在庫を捌きたくて、売れ残りのサイズを薦めるお店もあるようですが)

この記事の内容も私の経験と知識からなので同様ではあるのですが。ですのでこの記事を参考に靴を購入し、失敗してもクレームは受け付けませんのであしからずご了承ください。

ビンテージスチール
ハーフソール

今回はガラス加工の硬い革ですが、柔らかいスエードなら?ゴツくて重いラバーソールなら?ストームウェルトのグットイヤー製法なら・・と、仮に同じ靴でも使用されている革やソール、製法の違いでも感じるサイズ感は違ってくるかと思います。

ビンテージスチール
ビンテージスチール(LULU社)

例えば、柔らかいシープレザーでマッケイ製法の薄いレザーソールのローファーであれば、ある程度サイズが緩くても、靴底は曲がり易いですしアッパーも始めから馴染むので履けてしまうと思います。

ビンテージスチール

今回のローファーは大丈夫ですが、靴底よりつま先がはみ出ているか、または同じくらいの設定のローファーがあります。

はみ出ている場合は擦れる

このモカシンという袋状に縫製されているデザインの場合は、つま先に芯材(先芯)が入っていないので、踏み込む度に形状が潰れ膨らむような感じになります。

ソールより本体つま先が出ていると、はみ出た部分を地面に擦り付けながら歩行することになり、自ずとアッパーが擦り切れて穴が空いてしまいます。

ローファー
ソールよりアッパーは出ていない

そのような靴は構造的な問題なのでその状態からではどうにもできません。オールソールの際につま先のソールを少し拡張させ、本体が出っ張らないようにすることで改善することができます。

このように靴の種類により、それぞれサイズ感の違いや構造的な特徴があるので、購入する前に予備知識を備えておくことで少しはリスク回避にはなるかと思います。

ただ、靴はある程度履いてみないと分からない(表面化しない)ところもあるので、難しい品ではあるのですが。

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