靴のサイズが合わない人。

靴のサイズ
今回の合わない靴
目次

そもそも合っていない

靴のサイズが合わないとして持ち込まれる場合、大抵がそもそも購入したサイズが合わないというよりは間違っている事が多いように感じます。具合を確かめようと履いてもらうと、靴べらも使わずスッと足が入ったり、靴紐を緩める事なく入ったり、かかとに1.0cmほど隙間が空いていたり・・。

少しでも窮屈な感じがすると、後々痛くて履けなくなるのでは?と、その不安から大きいサイズを購入してしまう心理状態なのかも知れません。

靴のサイズ
羽が閉じている

ご依頼主さんに履いてもらうとすでに羽が閉じ気味。羽というのは紐穴が空いているパーツですが、まだそこまで履き込んでいない状態で羽が閉じています。

羽根モノを購入する時に気をつける事

履き込んでいくと中底が沈み(グットイヤーウェルテッド製法では特に)革も伸びて緩くなった時に、すでに羽が閉じきっていると靴紐を締めて甲の部分で足を抑えることができません。なので購入する際には羽がある程度開いている状態のサイズ感で購入しておく必要があります。

サイズ調整
羽は開き気味で買う

羽が閉じてしまって紐がそれ以上締められないと、履き口が閉じられないという事なので足が(踵が)抜けやすくなってしまいます。今回の靴は甲や指周りが大きいというよりは、履き口が閉じないのでそもそも購入したサイズ(足長)が間違っていたようです。

サイズ調整
履き口の周囲

サイズが間違っている場合というのは踵に隙間が開くような状態ですが、このサイズ感で購入してしまうと調整が厳しくなるので(特にローファーの場合)購入の際は気をつけた方が良いです。

これもそもそも論になってしまいますが靴を履いてもらうと、かかとに隙間が開いた状態で(足が前にずれた状態で)靴紐を締められる方がいらっしゃます。靴を履く際には靴のかかとに足をぴったりと合わせてから靴紐を締めないと、その靴のサイズが合っているのかどうかの判断ができません。

テニスの錦織選手が試合の休憩中に靴を履くシーンが中継されていましたが、履いた際にはガンガンガンと、かかとを地面に何度も打ち付け、かかとをフィットさせてから靴紐で縛り上げていたのが印象的でした。あれだけ前後左右に動き回るので靴と足が一体化していないと、という感じなのだろうと。

靴の履き方・合わせ方

サイズ調整

靴のかかと(ピンク)に足をぴったりと合わせた状態で靴紐を締めることで甲の部分で後方へと抑えつけ(ブルー)足と靴が固定できます。この状態で靴の一番広い部分(イエロー)と自分の足の広い部分の位置が合致しているか確認してみます。

購入時点で羽が閉じてしまうのであれば、以後も甲の部分で抑える事が出来ないのでその靴はアウトです。羽が開いて甲の部分でしっかりと押さえつける事が出来ていれば、指周りがある程度緩くても靴と足が後方で固定でき、前滑りしないのでとりあえず履くことはできます。

かかとを潰すとその靴は終わります

サイズ調整
芯材が入っている部分

入っていない靴もありますが基本的につま先とかかとには芯材が入っています。素材は革だったり合成素材で、かかと側は月型、つま先側は先芯と呼ばれ溶剤や接着剤で革を硬化させています。

靴紐を解かずに履いたり、指を引っ掛けて履いたりすると履き口周辺が裂けてきます。かかとを踏んでしまうと芯材も潰れてしまいます。履き口が裂けてしまった場合は補修はできますが、芯材を踏み潰してしまうと元に戻すことはできません。

かかとの芯材を潰してしまうと靴と足を固定する効果がかなり低下してしまいます。店主的には潰してしまうこと=終わった、感がありますので急いでいても座るなり靴べらを使うなりして履いた方が良いです。ただ営業マンの方だと「お客さんの前で悠長に座って履いてられないんです」、という仕方がない状況もしばしば伺います。

調整方法

履いた状態を触ってみると指まわりの革が余ってぶかぶかです。靴型のデザイン的につま先がゆったりして立ち上がりが高め、ということも影響していると思います。

サイズ調整

羽が閉じているだけであればベロの裏にスポンジ(タンパッド)を取り付けて拡張してあげれば羽が開くので靴紐で甲を固定できますが、今回は指周りがかなり余り過ぎているのでとりあえずインソールで少し窮屈にして調整することに。

ちなみにタンパッドとは?

タンパッド
タンパッド調整した場合

タンパッドで調整する場合はスポンジを入れて革で覆い縫製し(元の縫い目に重ねて)見栄えも変わりなく行えます。もしくは貼り付けるタイプの既製品もあるので自分で調整することもできます。

タンパッド

タンパッドを補修で取り付ける場合は縫製で固定してしまいますし費用も掛かるので、甲の部分で調整するのであれば既製品のタンパッドで済ませてもよいかと思います。

既製品のインソールの注意点

サイズ調整
履き口が浅くなってしまう

今回のように指周りが緩い時に既製品で調整しようとすると、全敷きタイプ(全体に入れるタイプ)のインソールを入れがちですが、全敷きタイプのインソールを入れてしまうと踵側も足が持ち上げられてしまいます。その場合は履き口が浅くなるということなので、足が抜け易くなってしまう逆効果なパターンになることも。

全敷きタイプのインソール

踏まずから前のオーダーインソール

サイズ調整
今回のインソールの範囲

店頭にてインソールの厚みを変えて履き比べて頂いた結果、5.0mm厚のインソールを入れることに。2.0mmを2枚と前側の中敷1.0mmで合計5.0mm厚に。踵部分はオリジナルの半敷きを繋ぎ合わせ、脱いだ時でも元の状態と変わりなく仕上げます。

サイズ調整

インソールは画像のピンクの範囲に設置します。傾斜していくところから自然に前側がかさ上げされるように革を漉いて調節しておきます。踏まず部分からインソールが入るので甲の部分も上昇し、羽も少し開かせる事が出来ます。

サイズ調整

土踏まず部分を盛り上げるとフィットしていいのかも知れませんが、逆に血流が悪くなる場合もあるので多めに漉いておきます。

サイズ調整
5.0mm厚

今回5.0mmかさ上げしているので足囲の寸法では計算上10.0mm小さくなっているはずです。例えばですがJIS規格のサイズ基準では、26.0の2Eだと足囲が255mmです。

サイズ調整

マイナス10.0mmだと、26.0のD(243mm)ぐらいになっています。

足囲のサイズ 6E > 5E > 4E > 3E > 2E > E > D > C > B > A

足囲のサイズ展開が行われているメーカーの靴だと足長と足囲で細やかにサイズ選びできますが、行われていないメーカーの靴では、甲や足囲が窮屈な場合に足長をワンサイズ上げがちですが、その際に羽が閉じてしまうサイズ感では後で緩くて履けない事になってしまう可能性があるので、購入の際は熟慮された方がよろしいかと思います。

サイズ調整
インソール取り付け完了

足囲のサイズ展開されているメーカーの場合でも、お客様に伺った話ですがオールデンの販売で有名なとあるお店では、お客様のサイズに合った靴を売るというよりは、お店の在庫状況によって近いサイズを薦めて売りつけられる、というような事もあるとかないとか。

ショップスタッフのアドバイスも参考になりますが、最終的には足を入れている自分の感覚を磨いていくしかないかと思います。

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