クレープソールの劣化
二足ともほとんどクレープソールは摩耗していませんが・・・。
ぱっくり・・・。
こちらもぱっくり・・・。
劣化し屈曲部分で割れてしまっています。クレープソールは劣化すると硬くなる場合と、ベトベトになる場合に分かれます。靴のソールでは恐らく唯一の天然素材で、採取したゴムの木の生育環境なのか生成過程なのかそれとも使用環境なのか劣化した際の状態はそれぞれです。
私も昔、クラークスではありませんがクレープソールの既製品を履いていた事がありましたが、その時はベトベト系でした。履こうと思ったら左右のソールが靴棚の中でくっついていた思い出があります。
ワラビーと他のクラークスのモデルの底付け方法の違い
デザートトレックやデザートブーツは画像のように周囲の縫い目をカットすれば簡単にソールを分離する事ができます。
ワラビーはクラークスの他のモデルと底付けの製法が異なっています。デザートトレックやデザートブーツは本体の革を縁で折り曲げ、そこでミッドソールと底縫いするステッチダウン製法という底付け方法で作られています。
ワラビーの場合は底縫いの縫い目は外観からでは確認ができません。この靴はマッケイ製法という底付け方法で取り付けられていて縫い目は靴内部にあります。ワラビーのソール構造はミッドソール、ヒール、アウトソールと三層に分かれています。
ソールは3層構造になっています
ミッドソール:4.0mm厚ぐらい
ヒール:15.0mm厚くらい
アウトソール:10.0mm厚くらい
本体に貼り付けられたミッドソールを靴内部で底縫いし(マッケイ製法)、その土台にヒールやアウトソールが貼り付けて製作されています。
アウトソールがラバーやレザーソールの場合は本体に底縫いされているミッドソールを残して、その他の傷んだソールを剥がし、新しいソールを貼り付ける事でソール交換が可能なのですが、クレープソールの場合はねちゃねちゃと素材自体に粘着性があり、尚且つ劣化してベトベト系となると剥がそうとしても素材自体がスライムのように伸びてしまいなかなか剥がす事ができません。
なので魚を捌くようにナイフでスライスしつつグラインダーで削り落とす方法になりますが、これがワラビーのソール交換の工程で私としては一番大変な作業と感じています。
ミッドソールの取り付け
画像を撮り忘れましたが、デザートトレックなどはソールを剥がすと抜け殻のようになってしまいますが、ワラビーの場合はアッパーは甲の部分で被せモカ縫いされているので、ソールを剥がしても底側は空洞にはならず靴下のような袋状になっています。
ミッドソールを取り付けたら靴の内部で底縫いします。
次にソールを貼り付けます。今回は二足ともvibram#2021のサンド(ベージュ系)です。vibram#2021はスポンジ素材になるので軽量でクッション性も良く快適なソールです。重いクレープソールからの乗り換えだとかなりのインパクトがあるのではないでしょうか。
私の場合は10年間ぐらいほぼ革底だけしかないていない状態から#2021に乗り換えた際には、アスファルトを歩いているのに、ふかふかの絨毯の上を歩いているような感覚でした(じきに慣れてはしまいますが)
vibram#2021と#2060の違い
どれが#2060 かクイズ!
どれが#2060か分かりますか?答えは左から3番目(ほかは#2021)。隣り合うと分かりますが色は#2060の方がやや濃いめです。表面の溝の柄は同じですが形状の違いは側面から見ると分かります。
#2060はヒール部分に段差が付いていて#2021はなだらかに繋がっている形状です。素材はどちらもスポンジです。なのでどちらの素材がどうという事はないので選択は形状の好みで、という感じでしょうか。#2021の方が段差がないので見栄えとしてはソールのボリューム感があるように仕上がります。
取り付けたら接着剤が硬化するまでしばらく放っておいて、よきタイミングがきたらグラインダーでザリザリザリと。スポンジは粒子が細かいので削った後は手やエプロンが粉まみれになります。ちなみにスポンジ素材はしませんがクレープソールを削ると劣化具合によっては亜麻仁油のような香りがしたりします。
ソールを削った時の香りは他にも色々あります。vibram#148は確かお香のような感じだったような、レザーソールの場合は鞣しに使われている素材により魚臭かったり香ばしかったりと色々。実物をじかに匂ってもそんなに感じないので、グラインダーで削る際の摩擦熱で香ってきているのだとは思いますが。
vibram#2021と#2060の違い
- #2060はヒールの部分に少し段差がある
- #2060の方が少し色が濃い
- #2021の方が若干ボリューム感がある
ワラビーのソール交換完成
今回はソールの色が二足ともサンド(ベージュ系)なので、ミッドソールもそれに合わせてナチュラルカラーに染めてありますが、ブラックソールであればブラックにすることもできますし、上面に見えるフチの部分だけナチュラルで側面はソールに合わせてブラックということもできます。
*ブラックカラーのソールを選択された場合、ミッドソールもブラックの場合はブラックのラバーミッドソールを使用します。
サンドカラーだとクレープソールのイエロー系に近いのでソール交換前と色の印象は似ていますが、レザーのフチがついてカチッとしてくると、クレープソールのカジュアルな感じから若干きれいめな印象に仕上がっているのではないかと思います。
vibram#2021のソールカラーはサンド・ブラック・ダークブラウンがあります。ブラックのスエードにブラックソールを用いてオールブラックもありですし、ミッドソールは染めずにナチュラルカラーで残すというのも良いと思います。それは実際に私物でやっている仕様ではあるんですが。
*ヒールの設定の都合で画像の靴はミッドソールを踵側に一段追加してあります。ミッドソールはナチュラルカラー仕上げでしたが、経年で陽に焼けて飴色に変化しています。ブラック/ブラックでミッドソールを明るくしてもこんな感じでアクセントになって良いのではないかと思う今日この頃・・・。
クラークスの関連記事