点ではなく面で支える。 TUMIのストラップ付け根補修

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ナイロン生地は裂けると修理が難しい。

ナイロン素材の鞄というのはナイロン生地が裂けてきてしまうと、その裂けている場所によっては補修不可になる場合もあります。今回も一番負荷がかかる部分なので中途半端に補修してしまうとまた同じように壊れてしまうことが予想されますので構造を変えて補修してみました。

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TUMIはいわゆる定番のブリーフ以外にもリュックなど色々なモデルが発売されているようですが、こちらはメッセンジャータイプというのでしょうか、ショルダーストラップで使用する鞄です。そのストラップを引っ掛ける本体側のパーツがナイロン生地が縫製箇所で裂けて外れてしまっている状態です。

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革と違ってナイロン生地は裂けてしまうとそこからどんどんほつれが広がってしまうので、その部分を縫製しても耐久性が保てないだったり、そもそもそのほつれ箇所をどうにもできない場合が多いので補修不可となる場合がしばしばあります。

ナイロン生地が裂ける要因 ベスト3

  • 重さに耐えきれず縫い目でナイロン生地を裂いてしまう。
  • 重さに耐えきれずナイロン生地が裂けてしまう。
  • 擦り切れてしまう。

今回の原因は重さに耐えきれず縫い目でナイロン生地を裂いてしまう事象になります。縫製している糸は強度の高いポリエステルなので、縫い目の強度は高くナイロン生地より縫い目の方が強い為、負荷が加わると下側にナイロン生地が引っ張られ縫い目に生地が食い込んで自ら裂いてしまうというパターンです。ナイロン生地が裂ける場合はほぼこのパターンです。

TUMI
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反対側はまだ無事のように見えますが、端の縫い目部分から本体のナイロン生地が裂け始めているのでこちらも補修が必要です。

TUMI
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通常はナイロン生地がほつれていなければ、元の位置にパーツを差し込んで縫製すれば済むことなのですが(この鞄の場合は本体のナイロン生地が弱すぎるのでダメですが)今回は生地が裂けてほつれているのでそれをどうするかという点と、鞄の内装側の中央に間仕切りのポケットが差し込まれているので、縫製する際に間仕切りが邪魔になってしまい補修箇所をそのままでは縫製することができないのでこの点もどう解消するか、というお題になります。

TUMI
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中央に間仕切りがあるのでパーツ付け根を真横に縫製することができません。パーツはもともと外装の薄いナイロン生地にのみに縫い付けられている状態なのでこれでは裂けて当然の仕様です。このような弱い生地の負荷がかかる部分にパーツを縫い付ける場合は、縫い目で生地が裂かれないように通常は裏面に補強芯を貼り付けて強度を高めるのですが今回は何も処置されていないようでした。

TUMIの定番のブリーフ鞄ではこれでもかというぐらい補強されているのですが(それで鞄自体が重い)モデルによってはこれが頑丈なあのTUMIなの?というぐらい補強が簡素なモデルも見受けられます。

面で治す

TUMI

ほつれている生地は元に戻すことはできませんし、そもそも本体のナイロン生地が弱いのでそれ自体にパーツを縫製しても耐えられないので、ほつれ箇所の目隠しと本体縫い付け部の補強を兼ねたパーツを用意することにしました。

TUMI
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もともとは引っ掛け金具のパーツがナイロン生地に差し込まれ、付け根を縫製して固定していましたが、その状態だとストラップで引っ張られた際には付け根の縫い目の端部分に負荷が集中してしまいその部分から裂けてしまっていました。なのでまずは引っ掛け金具のパーツを革のパーツに縫製し固定します。革の裏面には補強材を貼り合わせ縫製箇所に負荷がかかった際にも縫い目に耐えられるようにしておきます。また補強材を張り合わせる事で四角い革のパーツが硬くなるので、引っ張られた際に形状が歪んで偏った負荷の掛かり方にならないようにしておきます。

そしてそのパーツを本体の弱いナイロン生地に縫い付ける事で点としての縫い目ではなく四角い面として本体のナイロン生地を引っ張ることになるので、縫い目にかかる負荷が分散され本体のナイロン生地を縫い目で裂いてしまわないようになるだろうという想定です。

手縫いでちくちく...。

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次に問題となる中央の間仕切りが邪魔で縫製が困難という点ですが、ミシンで間仕切りの左右で分けて縫製すれば縫えないこともなさそうですが、恐らくそれだと左右それぞれ間仕切りを片側に寄せて縫製する必要があるので内装側の生地がもの凄く歪んでしまったり、左右で途切れた外観の縫い目が綺麗に繋がらない可能性が高いので、手間にはなりますが手縫いにて行うことにしました。手縫いであれば間仕切り部分の縫い目の辻褄が合わないところは、裏面と表面でそれぞれ糸の通し方で臨機応変に調節できそうかなと。

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それと縫い付ける本体側面が若干いびつに歪んでいましたので、その点も手縫いであればひと穴ずつ縫い進める時に革パーツと本体を寄せ合わせながら調節して縫製する事ができるので好都合です。ただ都合はいいのですが、ナイロン生地がふにゃふにゃしているのと裏地もあるので革を縫うようにサクサクは縫えず、また内装のナイロン生地に開いた裏穴をしばしば見失いながら、ちまちまと縫い進めるのでミシンで縫製するよりも数倍時間は掛かってしまいます。

「らしく」仕上がりました。

手間をかけた甲斐があってか、どうでしょうか「らしく」仕上がったつもりですが。もともとはもう一回り革のパーツが小さい設定だったのですが、型紙を合わせてみると少し大きくすると上端の部分がちょうど揃うのでその方が「らしく」なるなという事でこんな感じになりました。

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修理の際はこの「らしく」というのが重要だと思います。後付けの補修方法であれば尚更ですが、らしく仕上がっていれば補修したとしても自分以外には気づかれないでしょうから。

見切り発車ではありましたが、内装の間仕切りに影響も出ず革のパーツを縫製する事ができました。手縫いで縫い始める時には中央部分の間仕切りをどうやって跨いで縫製するかはぼんやりとしか想定できていませんでしたが、思いのほか簡単に通過する事ができました。考えるより手を動かせ、という感じでしょうか。

TUMI
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もともとは引っ掛け金具の付け根部分だけで固定されていましたが、革のパーツ全体で負荷を分散させるのでどこかの縫い目にピンポイントで負荷が掛かるという事がないので耐久性は向上していると思います。

定番のTUMIのブリーフ鞄なんかはこの負荷の分散方法がよく考えられているのですが、モデルによっては「こうも違うか」という感じです。リュックモデルも同様にナイロン生地の裂けが多発していますが、これも縫製方法や仕様を少し変えれば防げるよう感じなので、どうなんでしょうか設計者がブリーフとそれ以外のモデルは違っているのか?と思う今日この頃・・・。

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