TUMIの持ち手修理 旧モデル・ラウンド篇

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旧モデルの持ち手は現行品より耐久性に優れています。

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旧モデル(ラウンド)

TUMI定番のナイロン素材のブリーフ鞄ですと、持ち手の素材が旧モデルと現行モデルで異なっています。旧モデルはナイロンベルトに革が巻かれているモデルで、現行モデルは付け根から一体化している革のモデルになります。この現行モデルの持ち手は耐久性に乏しく不評で、皆さん旧モデルのナイロンベルトを用いた三角モデルへ仕様変更される方が多いです。

現行
現行モデル

特に旧モデルを使われていた方というのはその違いが分かる為か、ほぼ新品の状態の現行モデルの持ち手を旧モデルへ仕様変更される方もしばしばいらっしゃいます。

TUMIのナイロン素材の鞄は耐久性が高く、10年、20年と使われていても持ち手の革さえ巻き変えればまだまだ現役で使えてしまいます。一般的なナイロン素材の鞄ですと、早々と擦れやすい底の角部分が擦り切れてほつれてしまっていることが多いのですが、TUMIで使われているバリスティックナイロンは軍事用に開発された素材なので、当然ですが耐久性が非常に高く通常のナイロンの5倍の強度があるとされています。

断面の仕様

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現行モデルは付け根から一体化なので交換する場合は全て作り変えるしかないのですが、旧モデルの場合は巻かれている革の部分のみを交換することができます。その革の巻き方も2通りの仕様があります。旧モデルでも現行品が出現するまで現役だった付け根が三角のモデルの場合は、巻かれている革の断面がナイロンベルトと揃っていますが、それ以前の付け根の形状がラウンドモデル(その他にも形状が色々あります)ですと二つ折りされた手で握る部分に革が内側へと巻き込まれています。

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端が揃っているタイプ
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革が巻き込まれている巻き込みタイプ

二つ折り部分に革が巻き込まれているので、その部分が握った際に手に一番触れる部分になってしまう為か、巻き込み仕様の場合は巻き込まれているエッジ部分で革がだいたい擦り切れています。革が擦り切れてベースのナイロンベルトが露出しているのが分かると思います。

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巻き直す際はオリジナル通りに巻き込み仕様で革の交換を行うこともできますが、三角モデルのようにエッジで揃える仕様に変更することもできます。ちなみに巻き込み仕様の方が手間がかかるので交換費用が高いです。

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エッジが擦り切れています。
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こんな感じで内側に巻き込まれています。巻き込まれる部分は革の厚みを薄く漉いておかないと、二つ折りした際にその部分だけ盛り上がり段差も生じてしまいます。ただ部分的に漉くのが手間だったのかナイロンベルトに巻かれる革全体がそもそも薄い革を使用し巻いている持ち手もありました(もちろん耐久性は低下します)TUMIぐらいの世界的なブランドですと、その仕様については製造ラインで統一されていると思うのですが、同じモデルの持ち手でも革の厚みとか補強材やクッションで入れられているスポンジの有無などがまちまちであったりもしています。

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仕様が違ったり素材が違う事も。

仕様がまちまち具合の実例になりますが、冒頭の画像で同じ鞄が2個並んでいたかと思います。画像はその持ち手ですが、付け根が同じラウンドモデルで鞄のデザインも同じですが、革の質感が全く異なるのが分かると思います。

TUMI
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左が顔料仕上げで右は顔料と染料併用の感じです。左の革は表面に厚く塗料を吹き付けて仕上げている革なので塗料が劣化し塗膜が浮き上がっていて所々剥がれた部分は下地の色が白く見えています。右の革は染料も併用しているのか革の芯まで色が浸透しているので左の革のように劣化しても部分的に色が白く抜けている部分はなく全体的に色褪せている状態です。こんな感じで使われている革の質感も違っています。

当店の補修の仕方

当店でTUMIの巻革交換または現行品の持ち手交換で使用する革は、TUMI専用に革の厚みを指定し取り寄せているヌメ革のオイルレザーになります。適度にオイルが含有された革なので通常の革より乾燥しにくく、ヌメ革なので使用によりエイジングされしっとりと手にも馴染んでいきます。

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同じラウンドタイプでもナイロンベルトに革が巻かれている長さがまちまちなのでその都度、型紙を作成しています。二つ折りにしている距離もまちまちなんですがなんなんでしょうか、メーカーでは抜き型で革を裁断しているのでなんでこんなにも毎回違うのか謎です。多少の革の伸びはあると思いますが「伸び」という範疇では片ずけられないほど長さが異なっています。

巻き込まれる部分はオリジナル同様に薄く漉きますが手に触れる部分の厚みは残し、なるべく内側に巻かれる部分のみ革の厚みが薄くなるように加工します。

TUMI
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修理の際はすでに持ち手のナイロンベルトが本体に縫い付けられているUの字の状態から革を巻いていくので製品を製造する時より難度は高くなります。ベルトが曲がっている状態で革を巻こうとすると、内側と外側で距離が違っているのですがそれを型紙で再現するのは不可能なので、オリジナル通りに内外とも同じ距離の革のパーツを巻きます。

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ただそうすると距離の矛盾が生じますがそこは革の特性が役に立ちます。外側になる面は伸ばしながらベルトに巻き付けつつ、内側になる面はシワが寄らないようにシワを分散させて張り込んでいき、辻褄を合わせると下の画像のように貼り込めます。

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次に巻き込まれる部分を内側に倒します。その状態で一旦付け根部分の二つ折りにしない部分を縫製し、最後に二つ折りして縫製。二つ折り部分は革とナイロンベルトで四枚重なっているので縫製箇所の厚みは1.0cmぐらいになります。この厚みがぎりぎりミシンで縫製できるちょうど限界値です。

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巻き替え完了

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二つ折り部分の内側に巻き込まれる革は、厚みを薄く加工すれば巻き込みも縫製もやり易くなるのですが、なるべく耐久性が高くなるような設定で厚みを残し補修を行なっています。二つ折り部分は4重になっているので使い始めは硬さがあるかと思いますが、徐々に荷物の重さで握る部分が弧に撓って手に馴染んでいきます。

下の画像は旧モデルの三角タイプの交換事例になります。ラウンドも三角もそれぞれオリジナルから型取りし革の巻き替えを行なっているので交換後も違いは分からないと思います。(オリジナルの形状が歪んでいる場合もしばしばあるので、その場合は綺麗に修正して交換を行なっています)

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旧モデル・三角タイプの革交換後
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