スニーカーのかかとが(永遠に)擦り減らないようにする方法

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スニーカーの構造

スニーカーというのはいわゆる革靴とは違った構造になっています。通常は中底という硬さがある底が靴の中にあり、その中底に本体のアッパーが釣り込まれています。そしてその土台にラバーソールなどが接着されたり縫われたりして固定されています。

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スニーカーの場合は中底が無くイメージでいうと靴下にソールが直接付いているような構造です。なのでソールの形状は本体が少し埋まったようになっている場合が多く、それにより本体の底面形状を維持させています。

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インソール

スニーカーは厚めのインソールが入っていることが多いですが、インソールを抜くと底に見えるのは中底ではなく生地だったり不織布だったりします(中底があるものもあります)。

通常の中底であれば単体で曲げても曲がらない程度の硬さがありますが(踏まずから踵側は)、スニーカーの場合はソールを剥がしてしまうと土台となる中底が無いので靴下のようにふにゃふにゃになってしまい底面の形状が維持できません。

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中底がなくメッシュ生地の底面

そのような構造なのでかかと部分のソールに穴が開く、またはそれに近い状態まで履いてしまうと、土台は靴下と同じなので、その状態で靴底の擦り減った部分に補修をしても歩行の際に形状が維持できず、取り付けた補修材が剥がれてしまう確率が通常より高くなってしまいます。

履く前に補強する

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今回のご依頼品はクラークスのワラビーモデルのスニーカー。クラークスもクレープソールが嫌われがち?なのか合成素材のソールモデルを発売してきているみたいですね。

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白い発泡素材のスポンジに一回り小さく黒いラバー系の素材が埋め込まれています。このまま履くとどうなるか?耐久性のあるラバー素材は3.0mm程度凸になっていますが、一番摩耗しやすい端までは無いので、ラバーの出っ張りが少し減ると着地の際に白いスポンジのところがすぐに擦れはじめてしまいます。

この白いスポンジ素材はスポンジ素材の中でもサクサク系の摩耗しやすい部類なので擦れ始めてしまうとあっという間です。

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接着する為に表面を平らに加工する

なのでこういう場合は、はじめに踵に一段リフトを追加すると良いです。追加したリフトが摩耗した際にはまた交換できるのでオリジナルの土台は擦り減りません。表面に細かな凹凸があると隙間なくぴったりと接着できないので凹凸を少し平らに均します。

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リフトを一段足すとオリジナルの設定より約6.0mmほど踵側が高くなります。スニーカーの場合はヒールの設定がもともと高くないのでこの程度は許容範囲ですが、念の為、ご依頼主さんに6.0mm厚のラバーをかかとで踏みつけて傾斜具合を確認してもらいました。(郵送依頼の場合はご自宅で確認してください)

スニーカーのヒールの高さの設定は0mmから10.0mmぐらいと低めです。今回のようにリフトを一段取り付けた方が歩き易くなったという方もいらっしゃいます。確かに0mmや5.0mmぐらいの高さだと、歩行の際に自分で前進する力が必要です。ある程度ヒールの高さがあると自然に前傾して足が前に出て行くので歩行が楽になる事もあります。

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通常は境目の段差はそのままの厚みで取り付けることが多いですが、今回はオリジナルと柄が似ている素材だったので境目を薄く加工し馴染ませてあります。

このような奥まった位置だとリフトを貼り付けてから土台に合わせて外周を削ることができないので、左右とも底面の型取りを行い、ぴったりと合うように取り付けるラバー素材を加工してから貼り付けてあります。

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6.0mm高くなることである程度かかとが摩耗しても白いスポンジ部分と地面とは距離が保てるので、摩耗させず綺麗な形状のまま履き続けることができます。

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つま先側も同様の仕様ですが革底と違いソールが柔らかくはじめから靴底が屈曲してくれるので、つま先側はそんなに摩耗しません。なのでとりあえずこのままということになっています。

もしくは黒いラバー部分にハーフソールのようにラバーを取り付けることもできますが、つま先は先端の白い部分を歩行の際に蹴って擦ってしまうので、ハーフソールを取り付けたとしてもあまり効果が期待できません。

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リフトを一段取り付けても履いている時には影になるので見栄えに影響はありません。それに誰もソールを目の前でまじまじ見ませんし(エスカレーターぐらいでしょうか)。全体が柔らかスポンジソールの場合には、かかと部分を一段凹ませて、フラットにラバーを埋め込む方法で行うこともできます。

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リフトを追加しているとは気づかれない

余談ですが、素材表記のEUルール

ライニングに直接プリントされていたり、タグに靴のマークがいくつかプリントされているのを見たことがあると思います。今回はソールにシールが貼られていましたが、これはそれぞれ何の素材がどこに使われているのかを示しています。

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EU圏内では素材の表記が法律で決められているということで、この表記を知っていればライニングに合皮が使われているからいずれ劣化するな、とか購入の際に判断することができます。

EU圏の素材表記とは

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  • レザー
  • 織物、不織布
  • ゴム、合成素材、プラスチック

靴のマークに矢印が向いている箇所が何の素材かを右側のマークで示しています。

この靴は、
・アッパー(表素材)が革
・ライニング(裏地)が革と織物(生地)
・ソールが合成素材
と読み取ることができます。

合皮が使われている場合は使っても使っていなくても2.3年で劣化が始まります。これは靴が製造されてからではなく、その合皮が製造されてからになります。湿気がこもりやすい靴棚や靴箱で保管されているとより劣化の進行は早まります。

靴の場合はウレタン系のソールも同様に劣化します。セールで購入して一度履いたらソールが割れたという方もいらっしゃいました。年末のセールで購入し翌年のシーズンに履くとなれば製造からでも2年近くは経過しているのでしょうから、きっちりタイムリミット通りといった感じでしょうか。

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クレープソールの名残り

といっても合皮やウレタン素材でも長期間使用できている製品もあるので、劣化時期は使用環境に依存しているのだと思います。何れにしてもそのような必ず劣化する素材が使われている場合は、大事にしまっておかずにどんどん使った方がよろしいかと思います。

かかとについているクラークスのロゴ入りのクレープ素材風のパーツ。これはクレープ(生ゴム)素材ではなく合成素材ですが、この素材は劣化しがちなのでちょっと心配ではあります。クレープソールの名残りとして付けたんだと思いますが余計なことにならなければいいのですが・・・。

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