カサカサのカンペールのブラザーズ、どこまで復活できる? ソール交換編

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ソールはいつもの劣化割れ

カンペールのブラザーズに使用されているソールの素材も、ペロータス系と同じなので劣化により割れてきてしまいます。ただソールの厚みが薄い分、柔軟性がある為かパックリ割れるまでペロータスより時間は稼いでいるかもしれません。

ソールの劣化割れ
屈曲部分で割れます

カンペール・ブラザーズのソールの構造は、本体が5.0mm厚のミッドソールのスポンジと縫製され、踵部分に10mmのスポンジのヒールが積層、最後に3.5mm厚のウレタンラバー系のソールが接着されています(以後ラバーソール)。

つま先のラバーソールも欠け始めています
スポンジヒール層が露出

ラバーソールが摩耗し切ると、柔らかいスポンジヒール層に到達しサクサクと摩耗してしまいます。

ソール交換の際は摩耗したラバーソールのみの交換でも出来ないことはないのですが(摩耗したヒール部分は補修し)、ある程度年数が経過しているとミッドソールに接着されているヒールスポンジ層の接着剤も劣化している為、ソール交換後に後々この層から剥がれてくる可能性が高い為、本体に底縫いされているミッドソールスポンジ以外の部分(ヒールスポンジ、ラバーソール)を交換します。

ラバーソールを剥がす

ラバーソールを剥がすと本体とミッドソールを底縫いしている状態が見えてきます。柔らかいスポンジ素材のミッドソールを底縫いしているので、糸調子が合いにくく上糸の赤い糸が底面に引っ張られています。

踏みつけ部分から踵側はヒールのスポンジ層で底縫いが隠れています。

境目のヒールのスポンジ層が剥がれてきていますが、スポンジにスポンジを接着すると接着の相性が非常に良いので、通常は接着剤が劣化していても剥がれないのですが、こんな感じで捲れて剥がれてきています。

なのでこの層に新しいラバーソールを接着しても、その接着した土台が本体から剥がれてしまうとソール交換が無駄になってしまうので、縫われていないこの層ごと交換する必要があります。

スポンジのめくれ

ヨーロッパ系の接着剤は人体への影響を考慮し、有機溶剤の規制が厳しいようで接着剤の性能が低い感じがします。日本の接着剤は接着性能が高いですが、缶に貼られた接着剤のラベルにはドクロマークが・・・ちゃんと換気すれば問題はありませんが。

革はカサカサ

恐らくこの革の感じは一度も保湿クリームなどでお手入れをされていない状態かと。色も褪せて擦れている部分は地がでて白っぽくなり始めています。

カサカサです

底縫いの糸も色褪せていますが、これはしょうがない。

歩行する時に内側を擦る癖なのか、それとも紐を解かずに左右の踵を当てて脱いでいるのか。

踵内側の擦れ

カンペールのロゴタグ、これもソールと同じ素材でできています。画像では分かりにくいですが劣化してひび割れが入っています。このタグは作業中に割れてしまう確率が高いのでその場合はご希望により革のタグで置換が可能です。

劣化しているロゴタグ

ちなみに今回も作業途中で粉々に割れてしまいましたので革タグに置換しています。

ソール積層

捲れ始めていたスポンジヒール層は削り落とし、新しいヒールスポンジを接着。傾斜しているちょうどいい材料というのはないので、10mmのスポンジ板を接着し角度を合わせて斜めに削り出します。

10mmスポンジ板の取り付け
ヒール削り出し

最後にアウトソールを取り付けて完成となります。

ブラザーズ復活

今回は補色補修も行っています。カサカサだった本体は補色を行い、同時に保湿も施し潤いと艶を復活させました。

つま先の補色の仕上がり

カンペールに使用されている革は、比較的補色が行い易い表面仕上げの革が使われているので、いい感じで透明感を保ちつつ補色ができたと思います。

部分的に白く色褪せていた部分は無理に厚塗りせずに、逆にエイジング風味に色むらを効果的に活かしてみました。スエード部分は補色できないので(ブラックは可能)色が落ちない程度に黒ずみ汚れを軽く取り除きました。

踵内側の擦れていた部分

劣化し割れて粉々になったロゴタグを、新しい革タグに付け替えるのを忘れていることに撮影して気づきました・・。

革タグ付け忘れ

撮影を中断して革でタグを製作し縫製。

革のロゴタグ取り付け

色褪せていた底縫いの糸も染料で赤色を入れました。革と糸が同じ赤系なので今回は可能でしたが、革と色が異なる場合や糸の色によっては色入れは不可です。

底縫い糸も赤く色入れ

3.5mmnのラバーソールから6.0mmの軽量ラバーソールになっているので、見た目はオリジナルより厚みが増しています。ただ元のソールが薄いのでこの仕様の方が皆さん履き易いようです。

ソールの厚み

今回のソールはクロコ柄のフランス製の軽量ラバーソール。

グリップ効果のあるクロコ柄
靴紐も新しく

ちなみに当店は補色補修は専門分野ではないので今回の程度であれば対応できますが、革の色や元の表面仕上げ、補色範囲により対応できない場合があります。

ブラザーズの構造

ブラザーズの場合はミッドソール層を痛める前にソール交換を行ってください。本体と底縫いされているミッドソール層は構造的に当店では交換は行なっていません。交換してしまうとサイズ感が変わってしまう可能性がある為です。

  • 本体の革
  • 踵の芯材
  • 補強材
  • 中敷
  • ミッドソール層
  • ヒールスポンジ層
  • アウトソール(本底)

❶から❺は本体周囲の底縫いでまとめて縫製されています。通常は中敷は剥がせるようになっているのですが、ブラザーズの場合は本体と縫製されているので剥がせません。

取り外せない中敷

その中敷の下には恐らく2.0から3.0mm厚程度のスポンジが全体に挟み込まれています。ミッドソールまで痛めて交換する為に仮に剥がした場合は、中敷とミッドソールの間に挟まれたそのスポンジがボロボロと一緒に剥がれてきてしまう可能性が高いです。

その場合、新たにスポンジを入れ替えミッドソールを取り付けると、それまで足形に癖付いて凹んでいたスポンジがフラットなるのと、その挟み込むスポンジの厚みや硬さは完全にはオリジナルと一致できない為、サイズがキツくなる可能性が高いです(ミッドソールに押し上げられてスポンジの厚み分、内部が窮屈になる)

ですのでラバーソールが割れた場合には、雨水の侵入でミッドソールを痛めたり、摩耗させたりする前に、お早めの補修をお勧めいたします。

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